未来の究極に網羅的な1細胞解析には、非接触に一分子を並列自在操作できる技術が必要である。本研究は、ナノ流体デバイス技術に、柔軟に可変な光パターニング技術を融合させ、ナノ空間内の光電気効果による空間選択的静電場を生成し、水中の生体一分子の非接触操作技術を開発している。バルク系では起こり得ない光電気的な局所性電場の発生および維持が、ナノ流体空間内では起こる可能性を調べ、これを操作技術に応用しようとしている。 当該年度中に、まず、電気二重層の厚みより小さな100nm以下の流路高さと粒子が自由に動き回れる50~200nmの流路幅を持つナノ流体デバイス作製法を開発した。光リソグラフィーでパターニングしたSU-8ポリマーを熱で緩めて糊として使うことで、安価に複雑な構造のナノ流路作成を実現した。さらに、操作する微粒子をイメージングしつつ、自在な光パターンを対象に照射できる光電気工学系を実現した。具体的には、高感度カメラを用いて微粒子を観察しつつ、DMD: Digital Micromirror Deviceを用いて任意の光パターン照明の照射を実現し、流路内の光電気効果を誘引したた。その結果、このシステムを用いて、ポリスタイレンビーズの自在な操作を実現した。今後の展開としては、より小さな粒子である量子ドット・金ナノ粒子の並列自在操作に着手する。そしてこれを実現した後に、より困難な有機蛍光分子の操作に進む予定である。
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