現在,窒化アルミニウム(AlN) の励起子状態に強く関わる電子正孔交換相互作用について,2 つのグループ(一方は我々)から正反対の解釈が提唱されており,AlN の励起子状態に関する統一見解が得られていない.AlN の励起子状態の正確な理解は,歪みや低次元量子効果による振動子強度エンジニアリングを可能とし,紫外発光ダイオードの高効率化や,未だ実現されていない深紫外レーザダイオードの作製に向けて重要な知見を与える.そこで本研究の目的を,低温強磁場下における偏光反射・偏光フォトルミネッセンス測定を行うことにより,AlNの励起子状態を完全に解明することと設定した.
本年度は,まず低温強磁場下における深紫外分光測定系の構築を行った.具体的には,現有している15 Tまで磁場を印加できるクライオスタットに対して,ArFエキシマレーザ(193 nm)を導入できる励起光学系およびAlNの励起子発光(205 nm)を観測できる検出光学系の構築・設計を行った.He-Neレーザを用いて光学系の最適化を行い,He-Neレーザを分光器付属のCCDで検出できる状態よう光学調整に取り組んだ.また,本研究助成で特注の深紫外1/4波長板を購入し,上記光学測定系への組込みを図った.以上により,AlNに対して低温強磁場下における偏光反射・偏光フォトルミネッセンス測定を行う準備が整った.
並列して,AlNのc軸(結晶主軸)に磁場を平行に印加したときの励起子ハミルトニアンを不変量の理論を用いて構築し,実験結果の予測を行った.これにより,実験結果を理論的に考察可能となった.
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