シアニン色素J会合体薄膜の膜厚制御やJ会合体微小共振器の分光測定を行い,以下の結果を得た。 1. 色素J会合体薄膜の膜厚制御及び微小共振器の光学特性 スピンコーターの回転数,回転維持時間やポリマー濃度を変化させることにより,ポリマーマトリックス中に分散させた色素J会合体薄膜の膜厚を制御することに成功した。その結果,約130-400nmの膜厚を有する薄膜を得た。これにより,活性層厚が光学特性に与える影響を調べる準備が整った。また,色素J会合体を銀ミラーで挟み込むことにより微小共振器を作製した。この微小共振器の角度分解透過スペクトル測定を行った結果,励起子-光子強結合を反映した反交差の振る舞いを示し,共振器ポラリトンが形成されていることがわかった。さらに,角度分解発光スペクトル測定を行い,分散曲線を得ることにも成功した。 2. ラビ分裂エネルギーの制御 ラビ分裂エネルギーの大きさを制御するため,ポリマーマトリックス中の色素濃度を変化させた微小共振器を複数作製した。これらの角度分解透過スペクトル測定を行った結果,約95-190 meVのラビ分裂エネルギーを得た。また,シアニン色素溶液のpHを変化させると低色素濃度溶液でもJ会合体が形成されることが明らかになった。このようにしてJ会合体の会合状態を制御した溶液を用いて活性層を作製し,微小共振器の光学特性を調べた結果,ラビ分裂エネルギーを約95-130mVと変化させることができた。今後,溶液のpHと色素濃度を変化させることにより,ラビ分裂エネルギーを精密制御することが可能になると期待される。
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