本研究では、規則的な格子構造をもつ2次元シート材料を形成可能な「共有結合性有機フレームワーク(COF: Covalent Organic Framework)」を新しい材料創製の基幹素材とするための新合成法の開拓とそれをもとにした機能性カーボン材料の開発を目的としている。昨年度、室温合成法というCOFの新規合成手法を開発し、ソルボサーマル法(従来法)で作製したものと比べ、高い比表面積と熱安定をもつ高結晶性COFが得られることを明らかにした。本年度は、得られた高結晶性COFが窒素原子を含んだ分子骨格を有することに着目し、本材料を炭化することによって窒素ドープカーボンを合成できることを見出した。特に、参照試料として低結晶性のCOFを炭化して作製したサンプルとの比較を行った結果、高結晶性COFを用いた場合はラマンスペクトル測定においてグラファイト構造に由来するシグナルが明瞭に観測され、X線光電子分光測定からはグラフィティック窒素構造の形成割合が高くなっていることわかった。以上のように、COFの結晶化度が炭化後に得られる窒素ドープカーボンの構造や状態に大きな影響を及ぼすことを明らかにした。また、分子骨格の異なるCOFを炭化することで、ドープ状態などの構造や物性が異なる異種元素ドープカーボンを調製することにも成功している。 以上のことから、本研究ではCOFが異種元素ドープカーボンを創製するための原料として有効なことを明らかにしており、異種元素ドープカーボンの利用が期待されている燃料電池触媒などの応用分野へ貢献しうる重要な知見と成果を得た。
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