研究課題/領域番号 |
26886012
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
藤田 隆史 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 特任助教 (30737565)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | 金クラスター / 薬理活性 / ナノメディシン |
研究実績の概要 |
従来の白金製剤を用いた抗がん剤治療における厳しい副作用を改善した次世代の抗がん剤の開発を目標に、0価の金原子で構成される様々な金ナノクラスターの薬理作用(抗がん作用・正常細胞への毒性)を明らかにすることを目的とした。 今年度は、直径2nm以下の金ナノクラスターの調製法を開発した。酸化亜鉛を担体として、共沈法を用いてAu/ZnO触媒を調製した。この時、共沈物を水素気流下において250℃~300℃で焼成することによって、粒径1.5nm~2.0nmの金ナノクラスターの調製に成功した。気相反応ではあるが、金触媒の標準的な触媒反応であるCO酸化において、極めて高い触媒活性を示した。一方で空気雰囲気下で焼成しても、粒径3~5nmの粒子サイズであり、触媒活性も低かった。この方法の特徴は、金の担持量が酸化亜鉛に対して11wt%であり、通常、気相反応で標準的に用いられる金触媒の担持量1wt%よりも10倍以上多く、今後、金の薬理活性を評価しやすいと期待される。また、共沈法を行う際に、不純物イオンとしてバナジウムイオンを少量添加すると、金の粒子は、1.3nmになり、より金のサイズを小さくすることに成功した。今年度の研究によって、高担持量の担持金触媒の粒子径を、焼成雰囲気や焼成温度、不純物の添加によって能動的に制御することが可能になった。 細胞への評価の準備が間に合わなかったので、簡単な系として枯草菌に対して金の薬理作用の評価を行った。枯草菌の培地に対して、上記の方法で作製した金触媒を添加し、その発育阻止円を観察した。その結果、粒子径の小さな金触媒ほど、枯草菌の発育阻止円が大きくなった。この結果は、金触媒が菌に対しても、その化学的な活性を失わず、薬理活性を示したことを意味している。今後の細胞に対する実験に有益な結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
細胞培養・薬理活性の評価のシステム構築に時間がかかっている。しかし、来年度の予算を用いれば、システム構築に目途がつきそうなので、この研究の遅れは挽回できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に開発した担持金ナノクラスター触媒を用いて、がん細胞や正常細胞に対する毒性・薬理活性を評価していく。特に、担体の役割や金のサイズが細胞に与える影響を中心に研究を行っていく。このためには、細胞培養の技術がボトルネックになっているため、重点的に行う。金ナノクラスター触媒では、ポリビニルピロリドンやデンドリマーなどの有機分子で保護された金ナノクラスターも調製を進める。これらの金ナノクラスターは、すでにある程度、確立された調製法が報告されており、ある程度狙った粒子径の金ナノクラスターを調製することができる。そこで、今年度調製した担持金ナノクラスター触媒と同じ平均粒径を持つ有機分子保護金ナノクラスターと比較することで、金ナノクラスター触媒における担体と有機分子の役割も議論する。
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