今年度は、難治性がんの一つである膵癌に由来する細胞(Panc-1、Mia-Paca2)に担持型金触媒(酸化物担体に、5nm以下の粒子径の金ナノ粒子が担持された触媒)を添加した際の細胞応答の観察を行った。調製した金触媒の金担持量は1wt%であった。これらは、常温・水中下において触媒活性を示すことをグルコースの液相酸化反応において確認した。 最初に金触媒として最も典型的なAu/TiO2(金平均粒子径:4nm)について検討を行った。Au/TiO2を添加した場合には、両ガン細胞が細胞数が減少し、細胞死が観察され、Au/TiO2の用量反応関係が観察された(細胞の半数致死量は25ug/mlであった)。Au/TiO2は、両膵がん細胞に対して毒性があることが明らかになった。一方で、TiO2のみにおいても同様の実験を行い、Au/TiO2の結果と比較したところ、Auの担持によって25ug/ml以下の低濃度域の細胞毒性が大きく向上することがわかった。この傾向は、特にMia-Paca2に顕著に現れた。このことから、金の担持により低濃度域の細胞毒性が高くなる可能性が示唆された。そこで、金の担持量を大きくするために、すなわち、金の影響を大きくするために、昨年度に調製に成功した11wt%のAu/ZnO触媒(金粒子径:1.7nm)を用いて同様の実験を行ったところ、Mia Paca2に対して極めて高い細胞毒性を示した。 また、これら金触媒や金属酸化物が示す細胞毒性をリアルタイムで追跡するために、表面プラズモン共鳴や表面増強ラマン散乱をベースとした分析/センシング技術の開発も同時に行っており、今後、本実験系に組み込む予定である。
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