本年度は、分子吸着表面からの走査トンネル顕微鏡(STM)発光に関する研究を行った。STMの探針/真空/基板の界面近傍に局在する界面プラズモンの特性を調べるため、マクスウェル方程式からプラズモンモードを決定し、各モードのエネルギーが探針の曲率の増加および探針‐基板間距離の減少に伴って低エネルギー側にシフトすることを示した。またプラズモンの励起に伴って生じる高強度の電場は、探針直下から基板平行方向の数ナノメートルにわたり分布しうることを明らかにした。これをもとに、STMの探針を分子から基板平行方向に数ナノメートル程度離した場合にも、分子のエネルギー吸収により界面プラズモンの発光スペクトルが変化しうることを明らかにした。さらに、プラズモンの第2量子化を行い、有効模型を構築した。また、分子励起子とプラズモンの結合の結果生じる2つの結合モードの干渉が、系の発光特性に与える影響を調べた。その結果、2つの結合モードの間のエネルギー領域では、干渉によりプラズモンの発光強度が強く抑制され、分子励起子の発光強度が増強されることがわかった。これらの成果をまとめた論文を1報投稿するとともに、American Physical Society (APS) March Meeting 2015など4件の国際学会と3件の国内学会にて成果発表を行った。また国際学会The 7th International Symposium on Surface ScienceにてBest Poster Awardを受賞した。
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