研究実績の概要 |
2014年度は、第一原理計算に基づく超格子相変化膜の構造及び電子状態の体系的な計算と、実際にスパッタ法による成膜等を行った。これまで超格子相変化膜はGeTeとSb2Te3の組み合わせが主流であったが、他の材料に関してはほとんど研究がなく、最適な化合物の組み合わせは不明のままであった。そこで効率的に材料探索を行うために、第一原理計算による網羅的な研究を行った。候補材料はIVTe/V2VI3と表記され、それぞれ、IV: C, Si, Ge, Sn, Pb; V: As, Sb, Bi; VI: S, Se, Teである。GeTe/Sb2Te3超格子の最も重要な特徴の一つは、電子状態がディラックセミメタル的に振舞うところである。ディラックセミメタルとは、バルク状態で一つのk点でバンドがクロスした物質である。Sb2Te3は代表的なトポロジカル絶縁体として知られている。トポロジカル絶縁体とは表面(真空との界面)でのみバンドがクロスし、バルク内部ではギャップが開いた物質であり、近年、物性物理の分野で非常に注目を集めている。本研究の対象であるGeTe/Sb2Te3超格子はこのトポロジカル絶縁体と普通の絶縁体の積層構造であるため、上記のような特徴ある電子状態を示すと考えられている。様々な元素の組み合わせでバンド計算を行った結果、選択元素によってバンド図は敏感に変化し、SiTe/Sb2Te3やGeTe/Sb2Te3といった組み合わせにおいて特徴的なディラックセミメタルを示すことがわかった。これらは実際に薄膜やデバイスを作製するための指針となるため重要な知見であると考えられる。また、2014年度は実際に上記超格子膜の作製や構造の評価、デバイス構造の検討も始めており、次年度に実際の試料の諸特性の評価を行っていく計画である。
|