研究実績の概要 |
2015年度は、2014年度に引き続き、IVTe/V2VI3(IV: C, Si, Ge, Sn, Pb; V:As, Sb, Bi; VI: S, Se, Te)超格子の結晶構造や電子状態の網羅的な研究を行った。第一原理計算の結果、構造最適化を行った時の格子定数や原子間距離には組成依存性があり、重い元素ほど距離が長くなる傾向を示した。特に、VI-VI間のファンデルワールス結合間の原子間距離と格子定数cには線形な相関があり、ファンデルワールスギャップの距離が大きい超格子ほど格子定数も大きくなることが分かった。2014年度の研究から、電子状態も選択元素に敏感に依存し、特にGeTe/Sb2Te3などの限られた組み合わせにおいてバンドギャップがガンマ点でクロスするようなディラックセミメタルになることが分かっていた。本年度ではさらに詳細に調査した。特にファンデルワールス補正の有無や、格子定数と原子座標の体系的な依存性の調査から、わずかな原子間距離の変化によってバンドギャップが閉じたり開いたりすることを見出した。この結果から、外部から歪みを印加することで、ギャップの開閉、すなわち伝導度を制御できることを明らかにした。この計算結果に基づき、歪み誘起の新しいタイプのスイッチングデバイスを提案した。本提案デバイスでは、三端子を超格子上に成膜し、中間のゲート膜としては電界印加によって応力を発生する圧電材料を用いる。ゲート電圧によって超格子に印加される歪み量が変化するため、ソース、ドレイン間を流れる電流を制御させることができる。特に、ON状態において、ディラックコーン由来の伝導が実現できれば、有効質量が限りなく0に近いので、非常に高い移動度が期待される。今後、そのような構造のデバイスを作製し、動作実証を行うことが望まれる。
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