H26年度までの成果によって得られた試料ステージおよび温度計(ヒーター)薄膜の最適化形状をもとに、H27年度は、東北大金研の20T級超伝導マグネットに搭載可能な比熱測定セルおよびプローブを作製した。温度計の応答速度を上げるため、試料ステージには厚さ0.05mmまで薄く研磨したサファイア基板を用いた。プローブには極低温用の同軸線を配線し、10kHz以下程度の比較的高い周波数で温度計の抵抗値をAC測定した。この周波数領域では市販の抵抗ブリッジ回路は応答速度が遅いため使用できないので、測定周波数に最適化したローパスフィルターやラインフィルタ回路を自作することで測定機器等から来るノイズを除去した。 まず、この測定系を3He冷凍機に搭載しテストを行った。重い電子系籠状物質SmTa2Al20をテスト試料として用い、0.6-10K、0-17.5Tの温度・磁場範囲で比熱測定を行った。試料に50msのヒートパルスを与えその温度変化から比熱を見積もった今回の結果は、準断熱法で測られた先行研究とよく一致しており、本測定系が従来の測定手法と同等の精度で比熱測定可能であることが実証された。上記の成果の一部は2015年9月に開催された日本物理学会で報告した。
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