研究課題
完新世における日射量変化は地球軌道要素スケールでの気候変動と密接に関係し、地球表層環境に直接的影響を及ぼしてきたことが明らかになっている。しかし、日射量変化と短時間(数年~数百年)スケールの気候変動との関係はほとんど明らかにされていない。本研究では、沖縄諸島南琉球海域より採取されたオオジャコ化石の成長線および化学組成を用いて、生息当時の日射量変化と、海洋環境ならびに数年~数十年規模の気候の変化との関係を明らかにすることを目的とする。平成26年度は、主にオオジャコ化石の殻を季節単位以上の分解能でサンプリングし、炭素・酸素同位体分析を行った。殻の酸素同位体組成には明瞭な季節変化がみられ、同組成より見積もられる水温の季節変化は現在の南琉球海域における水温変化とほぼ同程度もしくはそれより小さかった。また、同酸素同位体プロファイルには、全体を通じて値の減少傾向が認められた。海水温の季節性の振幅は,殻全体を通じて大きく変化しないため,今回得られた酸素同位体組成にみられる成長速度の影響は比較的小さいと考えられる。殻の炭素同位体組成には明瞭な季節変化はみられず、全体を通じて値の減少傾向が認められた。また、同炭素同位体プロファイルには数年~十数年の周期性がみられた。今後は、オオジャコ化石の炭素・酸素同位体組成にみられる変化が何に強く支配されているのかなどの要因を詳細に検討し、生息当時の日射量変化と、海洋環境ならびに数年~数十年規模の気候の変化との関係を明らかにしたいと考えている。
3: やや遅れている
オオジャコ化石の炭素・酸素同位体分析の結果から、生息当時の海洋環境の変化を詳細に復元することができたが、殻の成長線解析を十分に進めることができなかった。
平成27年度は、オオジャコ殻の成長線解析および微量元素濃度分析を集中的に進める.オオジャコ殻の薄片(3個体)およびスラブ(1個体)の作製を行い、2つの手法(薄片を用いた光学顕微鏡観察,スラブを用いたデジタルマイクロスコープ観察)を用いて日輪幅の計測を行う.また、同殻の微量金属元素濃度分析を、炭素・酸素同位体組成と同程度の分解能でサブサンプリングし、測定する。
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Island Arc
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Geophysics, Geochemistry, Geosystems
巻: 15 ページ: 2091-2094
10.1002/2014GC005390