研究課題
再帰的に起こり持続性のある大気の流れを「天候レジーム」と呼ぶ。天候レジームの再帰性・持続性により、周辺地域に熱波・寒波・豪雨などの異常気象がしばしばもたらされ、人間活動に甚大な被害をもたらす。本研究では、世界各地で起こる天候レジームの予測可能性を調査するとともに、それらの予測精度を事前に知る(予測する)手がかりを得ることで、社会的に影響の大きい異常気象がもたらす被害の低減に貢献することを目指す。上述の目的を達成するために、平成26年度は、欧州、北米、アジア域、北極域、オセアニア、南米の冬季、夏季の天候レジームの特定・特性把握・予測可能性調査を行った。はじめに、ECMWFの再解析データの500hPa高度場データに対し、K-meansクラスター法を適用することで、天候レジームの検出を試みた。その結果、欧州(冬季・夏季)、北米(冬季)、アジア域(冬季)、北極域(夏季)、オセアニア(冬季・夏季)、南米(冬季・夏季)について、統計学的に有意な天候レジームを特定することができた。各地域の天候レジームはそれぞれ固有の性質を持っていることが分かった。例えば、大西洋、北米、北極域の天候レジームは他の地域よりも持続しやすいのに対し、アジア域のレジームは持続期間が短い代わりに特定のレジーム遷移を好んで行う事がわかった。次に、現業予報データセットであるTIGGEデータと再予報データセットであるGEFS reforecastデータにより、数値予報モデルにおけるレジーム遷移、確率論的レジーム予報の精度をみた。その結果、各モデルは独自に開発・運用されているにも関わらず、同じような予報特性を示していることが分かった(例えば、大西洋冬季ではNAO-の予測可能性が高い、大西洋リッジからブロッキングへの遷移の予測が難しいなど)。これは、大気の予測可能性が流れの場に大きく依存していることを示す。
2: おおむね順調に進展している
世界の主要地域における天候レジームの特定、並びに、予測可能性調査は当初の予定通り行われたが、地域によって注目すべき特徴が異なっていたために、解析に予定よりも時間を要した部分があり、論文執筆にまで至らなかった。しかしながら、地域によって注目すべき特徴が異なるという点で新規性が高く、当初考えていたよりも多くの興味深い結果を得ることができたので、平成27年度の早い段階で論文にまとめようと思う。
平成26年度に得られた成果の中にはいくつかの新規性の高い結果があるので、平成27年度の早い段階で特に新規性の高いものから優先的に論文にまとめようと思う。それと平行して、当初の計画通りマッデン・ジュリアン振動やエルニーニョ・ラニーニャ現象と天候レジームの予測精度の関係について調査していく。注目すべき天候レジームが世界中に特定されたので、研究が発散してしまわないように、注目すべき(優先度の高い)地域・季節を見定めてから着実に研究を進め、天候レジームの予測精度を事前に知る(予測する)手がかりを得ることを目指す。
(1)TIGGE Museumは、研究者代表者がこれまで開発・運営してきたアンサンブル予報に関するページで広く公開されている。(2)は本研究における成果を共同研究者と共有するために開設したもので、論文執筆前のため一般には非公開(google検索などでは検索されずURLを直接入力しないとたどり着けない)。本研究終了後には(2)を(1)の内部へ移動する予定。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) 備考 (2件)
Bulletin of the American Meteorological Society
巻: 未定 ページ: 未定
http://dx.doi.org/10.1175/BAMS-D-13-00191.1
http://gpvjma.ccs.hpcc.jp/TIGGE/
http://gpvjma.ccs.hpcc.jp/TIGGE/png/regimes/TIGGE/regime.html