研究実績の概要 |
ゲージ/重力対応は、(d+1)次元における重力理論とd次元における重力を含まない理論との間に非自明な双対関係を与え、非摂動的現象の解析及び量子重力理論の構築などの観点から大きな期待が寄せられきた。とりわけ、負の宇宙項をもつ反ドジッター時空において、これまで盛んに研究が行われてきた。本研究の目的は、非摂動的な重力現象の理解において新規の視点をもたらすと期待されるゲージ/重力対応の妥当性及びその有用性を、インフレーション宇宙において検証することである。
前年度に引き続き、平成28年度は、曲率揺らぎの保存則の成立条件を、双対な場の理論において検証した。曲率揺らぎの保存則は、一般相対性理論に代表される(多くの)重力理論の基本的な性質である一般共変性の帰結であることが知られている。本研究では、曲率揺らぎの保存則の成立条件を、重力を含まない双対な場の理論において検証した。双対な場の理論においては、時間発展はくりこみ群方程式を解くことにより決定される。2014年に発表した論文では、くりこみ可能な理論においては、曲率の二点相関は時間によらず、その振幅は保存することがわかったが、三点以上の高次相関に関しては、その保存則を示すことができなかった。今年度は、この際に直面していた問題を解決し、結果、曲率揺らぎの保存則が成立するためには、双対な場の理論がくりこみ可能性と局所性を保持している必要があることを示した。(Garriga & Urakawa, 2016)
また、昨年度発表した、多成分のスカラー場を含むインフレーション模型の双対な場の理論の構築(Garriga, Skenderis, and Urakawa 2015)の成果を、国際会議において発表し、その成果の周知に努めた。
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