研究課題
地球へ降り注ぐ宇宙線は、大気中で14Cや10Beといった宇宙線生成核種を生成する。14Cは二酸化炭素となり光合成で樹木へと蓄積される。また、10Beは大気中を漂うエアロゾルに付着し、雪などと共に地表にもたらされ、特に極域氷床に蓄積される。したがって、樹木年輪や氷床コアの宇宙線生成核種濃度は過去の到来宇宙線量を記録していると考えられている。本研究の目的は、西暦775年と994年に年輪の14Cを用いて発見された単年の宇宙線増加イベントの原因について追及し、さらに異なる年代の宇宙線イベントを探索するものである。これまでに、南極ドームふじで掘削された氷床コアの10Be濃度を測定し、西暦775年のイベントの原因が大規模なSolar Proton Event(SPE:太陽面爆発に起因する)が妥当であることを示した。当該年度には、さらに探索する年代を広げるために樹木年輪サンプルの確保とそのサンプル中の14C濃度測定を行った。年代が決定された日本産樹木の確保が難しい紀元前3000年以前の樹木サンプルの測定のため、古い樹木サンプルを多く有するアリゾナ大学年輪研究所と、世界における14C測定の中心的存在であるアリゾナ大学AMS研究所との共同研究を立ち上げた。アリゾナ大学に長期滞在することで、サンプル(年輪研究所が有するBristlecone pineサンプル)の前処理と14C測定を実施した。先行研究のIntCal(10年分解能の14Cデータ)から、宇宙線イベントが疑われる紀元前2479-2455年、紀元前4055-4031年、紀元前4465-4441年、紀元前4689-4681年の測定により、西暦775年イベントに匹敵するような規模の大きな宇宙線イベントは、この完新世では稀な現象であることを示した。また、紀元前5490-5411年の測定から、異なるタイプの宇宙線増加イベント(西暦775年イベントのような単年での増加ではなく、約10年かけて大幅に増加する)の存在を示した。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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PNAS
巻: 114 ページ: 881-884
10.1073/pnas.1613144114
Sci. Rep.
巻: 7 ページ: 印刷中
10.1038/srep45257
Radiocarbon
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1017/RDC.2016.54
10.1017/RDC.2016.50
Proc. 34th Int. Cosmic Ray Conf. (The Hague, The Netherlands)
巻: なし