本研究では、宇宙論的21cm線を用いて初代星に関連する物理をどの程度まで明らかにできるのかを理論的に評価することが目的である。 そのため本年度は、初代星物理において最も高エネルギーな現象、初代星の超新星に注目し、その爆発による宇宙論的21cm線のシグナルの理論的予言をおこなった。その結果、超新星爆発としての現象は短時間であっても、その後、超新星残骸として輝き続けるため、長時間の間(具体的には100万年くらい)超新星残骸特有の21cm線シグナルが現れることを示した。また、超新星爆発は初代星質量によっているため、シグナルの空間的広がりが初代星の質量に関連づけれる可能性があることを示した。これらの成果は英国王立天文学会による学術誌(Monthly Notices of the Royal Astronomical Society)で発表すべく、投稿準備中である。 またこれに並行して、初代星の形成史に非常に影響をあたえる宇宙初期磁場に関する研究もおこなった。具体的には、ガンマ線観測望遠鏡Fermiの観測データを用いた宇宙論的スケールの磁場への強度制限や、初期宇宙インフレーションモデルにおける磁場生成の可能性の研究をおこなった。これらの成果は全て英語学術誌において発表された。 そのほかにも、宇宙論的21cm線を用いたダークマターの素粒子論的性質に関する研究も行い、その中では、初代星の形成にどのような影響を与えるかを議論した。
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