研究実績の概要 |
(1)半線形熱方程式の解の爆発 べき型の非線形項を持つ半線形熱方程式の解の爆発について研究した。後方自己相似解と同じ速さの爆発を Type I 爆発、そうでない爆発を Type II 爆発と呼ぶ。空間次元が11 以上で非線形項の指数がいわゆるJoseph-Lundgren 指数を超える場合に Type II の爆発を示す解(以後、Type II 爆発解と呼ぶ)の存在が知られている( Herrero--Velazquez, 1994)。本研究では非線形項の指数が Joseph-Lundgren 臨界指数に一致する場合を考察し、接合漸近展開の手法を用いることによって Type II 爆発解が存在することを示唆する漸近的評価式を得た。これは既存の方法では扱うことのできなかった線形化作用素のある種の退化性によるスペクトル構造の変化を非線形項からの寄与と合わせることによって得られるものであり、上記Herrero--Velazquez の方法をより精密にしたものと言える。Type IIの特異性は様々な非線形偏微分方程式に共通する現象であり、この精密化が今後の特異性解析の発展に寄与することが期待される。本質的な計算を強調するため、その形式的部分について第一論文としてまとめ、現在専門誌に投稿中である。
(2)調和写像流方程式に対する爆発問題 調和写像流方程式を球面に値をとるものに限定して研究した。自己相似性の観点から半線形熱方程式と同様にType I, Type II 爆発の分類が可能である。高次元の場合、Type II 爆発解の存在はこれまで未解明であったが、上記方法を応用することによってほぼ予想通りの結果を得ることができた。この論文については P. Biernat 氏との共著論文の形で、現在投稿中である。
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