平成26年度は、特に間接型強誘電体である六方晶希土類金属マンガン酸化物RMnO3において見いだされている渦型の特異なドメイン構造の起源の解明と、そのドメイン構造が誘電率などの物性に及ぼす影響を明らかにすることに注力した。マンガン系では相転移温度が1000 K以上と高温であり、透過型電子顕微鏡で相転移に伴うドメイン形成過程の直接観察はできないため、結晶構造がRMnO3と同じでかつ低い相転移温度を持つ物質の探索および合成をおこなった。 そこで、相転移温度が800 K程度との報告例もあるインジウム系に着目した。フラックス法により単結晶の合成に成功し、透過型電子顕微鏡によって強誘電ドメイン構造の観察をおこなった。その結果、RMnO3で見いだされた渦型のドメイン構造と同じドメイン構造をインジウム系も有するということを初めて明らかにした。この結果は、渦型のドメイン構造はマンガンという特有の元素によるものではなく、結晶構造そのものに起因することを示唆する結果であり、渦型ドメイン構造の起源の解明に近づくことができた。 また、インジウム系の結晶は透明であり、黒色のマンガン系と比べて電気抵抗が高く、高温まで誘電率測定が可能となった。しかしながら、今までのところ、測定温度の範囲内で誘電率の明確な異常は観測されていない。
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