本研究では、偏光まで計算できる汎用の輻射輸送数値計算プログラムの開発を通じて、偏光の理論研究を推し進めることを意図している。このことにより、望遠鏡による偏光観測と、偏光理論を密接につなげ、天文学における偏光を利用した研究の基盤をいっそう確固たるものとすることが目標である。 近年、偏光の望遠鏡観測においては、偏光の撮像観測により、偏光の二次元マップとしての観測データを得られるようになってきている。偏光を通じて天体現象のさらなる理解が期待されている。そのため、偏光の数値計算や理論が重要となっている。 本研究では、モンテカルロ法を用いて、光の偏光状態まで含めた輻射輸送の数値計算コードの開発を進めている。このたび研究環境に導入されたコンピューター環境での稼動も念頭に置きながら、プログラムの開発を進めた。とくに今回は使用できるメモリが大きくなるため、計算空間の情報を増加させる可能性が期待された。一方で、偏光の観測状況を鑑みるに、今後の詳細な観測への対応を考えるとメモリを空間情報にどれだけ費やせるかは慎重に検討する必要もある。計算効率や精度をいっそう上げるために、散乱過程をどのように計算したほうが良いか検討を深めている。また、計算空間には、星・惑星形成領域を意識した典型例として、散乱体を円盤状に空間分布させてテスト計算を実施し、それらの計算結果が正しいか慎重に吟味を進めている。これらを鑑みながら、さらにプログラム開発を進める。
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