研究課題/領域番号 |
26887032
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
山本 直希 慶應義塾大学, 理工学部, 講師 (80735358)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | トポロジー / 初期宇宙 / 中性子星 / Weyl半金属 |
研究実績の概要 |
トポロジーという視点から、初期宇宙のような超高温状態や中性子星内部のような超高密度状態などの物質の極限状態の平衡・非平衡ダイナミクスを解明すると同時に、素粒子・原子核・宇宙・物性物理の様々な現象を統一的に理解することが本研究の目的である。 今年度の研究では、非相対論的な系の基底状態では永久電流が流れないという「Blochの定理」を相対論的な系を含む一般的な場合へと拡張した。さらに、相対論的な系におけるトポロジカルな輸送現象である「カイラル磁気効果」が、物性系における量子ホール効果と同じように、Blochの定理の非平衡定常状態への一般化として理解できることを示した。一方で、軸性電流についてはBlochの定理が適用できず、実際に相対論的な物質のスピン偏極として理解できることを示した。この一般化されたBlochの定理は、物性系だけでなく、高エネルギー物理学の全ての系に適用できるもので、基本的な重要性があると考えられる。 また、相対論的な系で起こりうる全ての非線形の輸送現象を対称性に基づいて分類し、相対論的な系に特有のトポロジーの効果によって起こる新しい輸送現象を見出した。さらに、我々がこれまでに構築したトポロジカルな輸送理論を用いて、その輸送係数を評価した。このような新奇な輸送現象は、高エネルギーの相対論的な系で現れるだけでなく、Weyl半金属と呼ばれる新しい物性系でも実現できる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
トポロジカルな輸送現象の応用だけでなく、本研究課題と関係する基本的な問題「基底状態でのトポロジカル輸送現象の可能性」をBlochの定理の一般化によって否定的に解決できたという点で、当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
カイラル磁気効果によって引き起こされるプラズマ不安定性である「カイラルプラズマ不安定性」の時間発展について、今年度の研究では準備段階での数値結果が得られているが、今後はその相対論的重イオン衝突実験や初期宇宙での現象論的な応用について議論する。また、カイラルプラズマ不安定性によってマグネター磁場の起源を説明する我々の仮説に対して、今年度の他の研究グループによる研究で、電子の質量がそれを抑制する可能性が指摘された。今後は、カイラルプラズマ不安定性と電子質量の競合を考慮して、我々の仮説の定量的な妥当性を検討する。
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