トポロジーという視点から、初期宇宙のような超高温状態や中性子星内部のような超高密度状態などの物質の極限状態の平衡・非平衡ダイナミクスを解明すると同時に、素粒子・原子核・宇宙・物性物理の様々な現象を統一的に理解することが本研究の目的である。 今年度の研究では、まず、左右の対称性を破るカイラルプラズマの1つである初期宇宙の電弱プラズマの性質を調べた。特に、原始磁場中での電弱プラズマにおいて、カイラルプラズマに特有のトポロジカルな輸送現象のために、新しいタイプの波が存在することを発見し、「カイラル アルヴェン波」と名付けた。カイラルアルヴェン波は、これまで知られている様々な波(音波、電磁波、重力波、ゼロ音波、アルヴェン波等)とは異なり、空間反転対称性を破るような横波の初めての例となっている。 また、電弱プラズマのようなカイラルプラズマの時間発展を数値的に解析し、従来無視されていたカイラルプラズマに特有のプラズマ不安定性の影響によって、初期宇宙でバリオン数を変化させる過程の起こる速さが定量的に変わることを明らかにした。 超新星爆発においては、物質の密度が十分高いコア領域において、ニュートリノ物質がカイラルな流体として振舞うことが分かっている。このような領域では、ニュートリノ数が量子効果のために保存されず、流体のヘリシティに転化するという新しいメカニズムを見出した。このメカニズムは、流体力学の枠内でニュートリノ数が常に保存するという従来の常識を覆すものであり、超新星爆発の起源そのものに重要な役割を果たすと期待される。さらに、生成された流体ヘリシティが新たな磁気不安定性を誘起することも明らかにした。これは、マグネター磁場の起源と関係している可能性がある。
|