• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2014 年度 実績報告書

原子の高空間分解制御および近接場技術の駆使による中性原子ナノ格子系の実現

研究課題

研究課題/領域番号 26887033
研究機関中央大学

研究代表者

柴田 康介  中央大学, 理工学部, 助教 (90735440)

研究期間 (年度) 2014-08-29 – 2016-03-31
キーワード原子輸送 / 高空間分解イメージング
研究実績の概要

本年度は、第1に、レーザー冷却された原子を物体近傍に輸送する技術を確立した。具体的には、直方体ガラスセル中において、磁気光学トラップ(Magneto Optical Trap;MOT)を用いて低温のルビジウム原子集団を準備し、続いて、MOTを圧縮し、高密度のルビジウム原子集団を作成した。さらに、圧縮された原子集団に対し、十分に離調された光トラップビーム(波長1.06μm)を、適切なアライメントで照射することで、数百万個の原子を光トラップへ移行することに成功した。そして、光トラップビームの焦点を鉛直上方に移動することで、原子集団をガラスセル表面から数 μmの距離まで輸送することに成功した。なお、原子集団の移動距離は、およそ15 mmであった。輸送に関して特筆すべき点として、移動中に光トラップビームが水平から大きく傾くと、重力によって原子がトラップから落下してしまうので、光トラップビームの角度を水平近くに保ったまま、原子を移動できるように、光トラップの光学パスを綿密に設計した。
第2に、ナノ格子を実現するための基板設計のために、電磁界解析ソフトウェアMeep(MITが開発したフリーソフトウェア)をベースとして、ナノスケールの金属構造体付近の電場強度分布を計算するプログラムを開発した。
第3に、ガラスセル近傍の原子の観測に適した高空間分解イメージング系を構築した。具体的には、半球レンズと、既成の非球面レンズとを組み合わせて、高開口のイメージング系を組んだ。作ったイメージング系の分解能をピンホールによる疑似点光源を用いて評価したところ、1μmの分解能が得られた。これは、原子集団を観察するのに、十分な分解能である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度の当初の大きな目標の1つは、研究課題の達成の要となる、低温原子集団の物体表面近傍への輸送技術を確立することであった。この目標は、十分達成された。
もう1つの目標であった、ナノ格子発生用の基板を設計・製作に関しても、設計に必要なツールを確立できている。
以上のことを考えると、研究はおおむね順調に進展しているといえる。

今後の研究の推進方策

今後は、輸送された原子集団を、ナノ格子ポテンシャルに導入できる極低温(数百nK以下)にまで冷却する。具体的には、セル表面近傍で、交差型光トラップを実現し、交差型光トラップ中での原子集団の蒸発冷却によって、極低温を実現する計画である。
また、ナノ格子生成用の微細加工基板の設計・製作を行う。その後、基板付近の近接場の測定実験を行う。当初は、微細加工基板と冷却原子とを組み合わせた実験にすぐに着手するつもりであったが、これには実験上克服すべき課題がまだ多い。そこで、まずは、室温あるいは高温のセル中のルビジウム原子を用いて、基板付近にナノスケールのポテンシャルの存在を確認する実験を計画している。
最終的に、冷却原子を、微細加工基板付近のナノ格子ポテンシャルに導入し、中性原子のナノ格子系の実現を目指す方針には変わりはない。

URL: 

公開日: 2016-06-01  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi