研究課題/領域番号 |
26887039
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
中村 由克 明治大学, 公私立大学の部局等, 客員教授 (10737745)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | 石器石材 / 旧石器時代 / 原産地 / 透閃石岩 / 蛇紋岩 / 移動経路 / 石器 |
研究実績の概要 |
本研究は約3.8万年前にさかのぼる後期旧石器時代の前半期にのみ存在した石器・石斧の石材鑑定をして、当時の人類がどこからどこまで石材を運んだかを明らかにすることを主な目的とした。旧石器時代の石斧が出土している長野県、群馬県、石川県、静岡県、秋田県、岩手県の遺跡の石器の石材を詳細に調査し、各地の石材使用の実態が判明した。 石斧石材として一番多く使用されていた透閃石岩が、主産地である新潟・長野・富山県境以外に産地があるかという調査を、岐阜県、石川県、岩手県、福岡県で実施した。この結果、旧石器時代の石器には主産地以外のものが使用されていないことが判明した。また、縄文時代でも、従来言われていた蛇紋岩はほとんど使用されず、透閃石岩が主体であることが判明した。 石器石材の非破壊鑑定法の開発としては、実体顕微鏡観察、帯磁率測定、比重測定、光沢度測定などの手法を用いて、石材の詳細な種類や変質作用の鑑定を行い、先史時代に用いられた石器を調べる研究法をほぼ確立することができた。さらに、石器石材の採集地を特定する方法を開発するため、長野県長和町で黒曜石、群馬県下仁田町で頁岩、秋田県で珪質頁岩の分布地を調査し、河川における礫の大きさ、形状、表面の構造などの特徴を調べ、遺跡出土の石器と比較することで、先史人類がどこで原材料を採集したのかが推定出来ることを明らかにした。 これらの調査の結果、北陸原産の透閃石岩製石斧の分布は、石川県から秋田・岩手県まで広がる一方、それが及ばない大平洋側では、静岡県、岩手県などに緑色凝灰岩を使用する地域があることが判明した。その結果、当時、日本海沿岸域に沿った南北の広大な移動ルートができていたことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
旧石器時代の石斧の分布域のうち、日本海側の地域における石斧の石材をほぼ調べることができた。太平洋側については、中心地の1つ、静岡県と岩手県を調べることができ、さらに研究を全国に広げる見通しを立てることができた。縄文時代には産地となっていた九州と岩手県の石材と北陸の石材を比較し、判別できることがわかったので、遠隔地間の遺跡の石器の石材を比較できるようになった。 また、石器の石材の種類を特定し原産地を推定することに加えて、その岩石が自然状態でどのような場所から採集されたかを推定する方法を開発することができた。 以上により、当初目標とした研究目的は、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
旧石器時代の石斧のある地域で、本州の太平洋側の地域の石器の石材を重点的に調査する必要がある。特に遺跡が多い関東地方、中部地方を重点的に調査したい。 また、石斧以外の石器の石材では、東北地方から中部地方に多い珪質頁岩の原産地を特定する方法を開発する必要があり、引き続き取り組みたい。
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