本研究課題の目的は、太陽に見られる活動領域やフレア現象の物理機構について、数値シミュレーションと観測データ解析を組み合わせて解明することである。 2年度目となる平成27年度には、初年度から継続して進めている、活動領域形成時に見られる「ライトブリッジ」と呼ばれる磁場構造の観測的・数値的研究をさらに発展させた。その結果、太陽表面に黒点が出現する際、黒点内部に残された対流が弱い磁束を表面へ持ち上げ、黒点磁場とさせることで磁気エネルギーの突発的解放(磁気リコネクション)を生じさせていることが明らかになった。これは黒点の発生過程と太陽表面に観測される多様なエネルギー解放現象とを関連づけ、磁場と対流との相互作用がエネルギー解放につながることを解明した成果である。以上は2本の英文査読論文として公表した。 また、平成27年8月には米国ロッキードマーチン太陽天体物理学研究所に滞在し、現地の研究者と太陽フレアを生じた活動領域に関する初期的な観測データ解析を行った。これは米国の太陽観測衛星SDOの観測データを用いることで、特定の条件のもと2010年以降に生じたすべての太陽フレアを解析し、フレアを生じやすい活動領域や黒点の特徴を統計的に抽出する研究である。 平成28年1月には、上で述べたライトブリッジの観測・数値シミュレーション研究とフレア活動領域の統計観測研究について報告・議論を行うため、スイス・ベルンで行われたInternational Space Science Instituteの会議に参加した。
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