研究課題/領域番号 |
26887049
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
石田 茂之 独立行政法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 研究員 (90738064)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | 新超伝導体探索 / クロム化合物 / 元素置換 |
研究実績の概要 |
本研究の目的および実施計画に従い、クロム化合物をターゲットとした新超伝導体探索を行った。 データベース等を用いた候補物質の絞り込みの結果、第一の候補物質として層状クロム化合物であるCrSe2に着目した。この物質は構造相転移および電荷秩序を起こすことが知られており、この秩序相を抑制することで超伝導化する可能性がある。秩序相の抑制方法として、まずドーピング制御を試みた。そこで着目したのが、この物質の類縁化合物であり、Kが層間に挟まれたKxCrSe2である。KxCrSe2は合成手法と結晶構造に関する報告があるものの、その物性は報告されていない。そこで、フラックス法を用いてKxCrSe2単結晶を合成し、物性測定を行った。電気抵抗の温度依存性から、この物質は絶縁体的であることが明らかになった。また、KxCrSe2単結晶をヨウ素溶液中に投入することで、Kを引き抜くことも可能である。これにより、CrSe2単結晶の作製にも成功した。 続いて、第二の候補物質として、2014年に報告されたクロム化合物超伝導体K2Cr3As3に着目し、その類縁化合物の探索を行った。K2Cr3As3は非従来型超伝導機構の可能性が指摘されており、元素置換等を施した類縁化合物でより高い超伝導転移温度が実現することが期待される。そこで、Kを同じアルカリ金属であるNaおよびLiで置換することを試みた。高圧法およびフラックス法を用いた合成を試みたが、現在までのところ目的の物質は得られていない。これはイオン半径の違い、すなわち、Kに比べてNaやLiは小さいため、結晶構造が安定化されないことが原因と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究目的に従い、クロム化合物に着目して新超伝導体の候補物質を挙げ、その合成に着手している。KxCrSe2やA2Cr3As3(A = Li, Na)の合成に取り組みその物性評価を行うプロセスは適切なものであると考えている。新物質探索においては合成手法・条件の最適化が常に問題となることを考慮すると、おおむね順調であると言える。特にKxCrSe2に関しては、超伝導化には至っていないものの、未報告の物性を確認したことの意義は大きい。
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今後の研究の推進方策 |
第一には、昨年度に引き続きCrSe2に着目し、秩序相の抑制による超伝導化を試みる。具体的には、CrSe2単結晶へのK以外の元素のインターカレーション置換を試みる。また、CrまたはSeに対して元素置換を行うことが可能か、置換が可能であれば物性が変化するかを調べる。さらに、高圧力印加による秩序相の抑制を試みる。第二には、データベースを用いて新たな候補物質となるクロム化合物を調査し(例えばYCr2Si2を候補物質の一つと考えている)、既知物質の合成・評価を拡張し、元素置換による新物質の探索を行う。
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