研究課題
本研究の目的および実施計画に従い、クロム化合物を中心とした層状結晶構造を持つ物質群を対象に新超伝導体探索を行った。前年度に引き続きKxCrSe2(x = 0, 0.5)に着目し、キャリアドーピングおよび圧力印加による超伝導化を試みた。K0.5CrSe2単結晶を用いて、圧力下での電気抵抗測定を行った。常圧では絶縁体的な振る舞いを示し、圧力印加によって5GPaまでは電気抵抗が小さくなった。しかし、5GPaを越えると再び電気抵抗が大きくなった。K0.5CrSe2は圧力印加により金属化しないことが明らかになった。圧力印加により、何らかの相転移が起こった可能性が示唆される。またCrSe2単結晶について、Liインターカレーションによるキャリアドーピングを試みた。Kをデインターカレーションして得られる物質であることから、層間にLiが容易に入りキャリアドーピングが可能であることを見出した。Liインターカレーション前後の試料の磁化測定を行ったが、2K以上では超伝導転移は確認されなかった。層状化合物超伝導体ZrP2-xSexについて、詳細な物性測定と電子状態計算を行った。この物質はSe置換量によって超伝導転移温度Tcが変化する。電気抵抗は電子・格子相互作用が主に作用していると考えられ、また残留抵抗率はSe置換量とともに増大する。比熱測定からは、Tcの変化は状態密度の変化と相関していることが明らかになった。電子状態計算の結果が実験結果と整合することと併せると、弱相関BCS機構によって超伝導が発現していると結論付けられる。ZrP2-xSexはSe置換により結晶構造が変化し超伝導化するユニークな物質であり、結晶構造制御という新超伝導体探索の指針を与える点で重要である。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Superconductor Science and Technology
巻: 29 ページ: 055004
10.1088/0953-2048/29/5/055004