現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「希有な」対称性の大環状配位子と金属配列の達成のため、平成26年度は、二官能性モノマーの設計・合成、およびそのオリゴマー環化反応による大環状分子の合成を検討する計画であった。研究実績で述べた通り、本年度では、(1) ピリジン環にアルデヒド基とアミノ基を導入したモノマーを用いた環状四量体の合成、(2) ピリジルカルバルデヒド基とアミノフェノール基を有するモノマーを用いた環状六量体の合成、を達成した。特に、(2)の環状分子は、内孔に向けたN,N,O-の三座キレート配位部位を有する、当初の計画設計通りの特長を有する大環状配位子であり、今後のオリジナルな機能創製が多いに期待できる。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、平成27年度では、平成26年度で合成を達成した大環状配位子を用いて、(1) 異種多核金属錯体の合成と物性探索、および (2) 動的かつ非対称な分子認識と反応開発の研究を行う。具体的には以下のとおりである。 (1-i) キレート配位した金属の交換が遅い性質を利用し、後から第二の金属イオンを加えて環中心部に集積させた、異種多核金属錯体を合成する。配位構造が金属の電子状態に大きな影響を与える第一周期遷移金属 (Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Zn) の様々な組合せについて検討する。特に、剛直な環状配位子の対称構造が与える制約を受けて中心部の金属に生じる、元素固有の軌道の対称性 (Oh, Td, など) と異なる歪んだ配位構造に着目して研究する。(1-ii) 外部配位子との交換反応による特異な幾何構造の多核錯体の活性部位と反応機構の解明を行う。(1-iii) 酸化還元反応により、中心と周縁部の階層構造を有する異種多核金属錯体に特徴的な多電子移動反応について調べる。 (2-i) 配位結合を介したゲスト分子認識能の金属イオン濃度によるアロステリック制御を目指す。特定の濃度の化学シグナル存在下でのみ機能する分子は、生体のようなフィードバックによる恒常性を有するシステムの創成につながる。(2-ii) ホスト/ゲスト複合体の詳細な解析を行う。特に、ホストの対称性とゲストの対称性に着目した複数の安定状態間の動的な変化や包接後の非対称化の様式を解明する。(2-iii) 得られた知見を基に、大環状錯体の内部空間を利用した基質反応へと研究を展開する。 また、引き続き新規なモノマーの設計と機能性環状分子の合成検討を行う。
|