研究課題/領域番号 |
26888006
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
林 文隆 信州大学, 先鋭領域融合研究群環境・エネルギー材料科学研究所, 助教 (20739536)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | アモノサーマル / 液体アンモニア / 窒化物 / 炭化物 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、超臨界アンモニアや亜臨界水を溶媒とするソルボサーマル装置および高温電気炉を立ち上げた。また、ナノシートの前駆体となるMAX相化合物(Mn+1AXn:n=1~3;M = Ti,Zr,V,Nb,Ta,Cr,Mo;A = Al,Ga,In,;X = C,N)を単一相で得るために、育成条件を検討した。 用いたソルボサーマル装置は既製品ではないため、ガス・溶液の流路から反応容器部まですべて自ら設計し、発注した。当初の予定よりも設計・納品に時間がかかった。加えて1500℃まで使用できる電気炉を購入した。 はじめにMAX相化合物として、Ti2AlCを選んだ。本炭化物は高温固相法を用いて合成した。金属チタン、アルミニウム、炭素を所定のモル比で混合して高温で加熱した。XRDの結果から、目的の炭化物が単一相で得られることが分かった。また、走査型電子顕微鏡観察から、数ミクロンメートルの板状粒子が得られた。本試料を既報の手順(Adv. Mater., 23, 4248-4253 (2011))でフッ酸処理して炭化物中のAl層を溶解除去し、ナノシートに転換した。一部沈澱凝集物も観察されたが、目的のコロイド溶液が調製できた。本試料の表面はフッ酸処理されているため、水酸化・フッ化されていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度は、予想外に装置納品に時間がかかり超臨界アンモニア処理できるソルボサーマル装置や高温電気炉の立ち上げと前駆体のMAX相化合物の合成条件の検討にとどまった。しかしながら、装置の立ち上げは無事終わり、ナノシートの作製もできるようになった。試料作製・評価できる環境は整ったので、平成27年度は当初の予定通り研究が展開できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、平成26年度に得られた成果を元に、表面が(水)酸化されていない窒化物・炭化物ナノシートの作製に注力する予定である。出発窒化物として、Ti2AlN,Nb2AlNを予定している。合成結果により適宜312、413相の窒化物や炭化物も出発材料として検討する。Al層を溶解除去する酸性鉱化剤として、NH4Cl等を使用する。最適合成条件を決定するため、1)鉱化剤の濃度、2)反応温度・圧力、3)反応時間を検討する。作製したナノシートの結晶構造はXRDにより、粒子のサイズや厚みはFE-SEM、TEM、AFMにより評価する。また、表面およびバルクの化学組成はXPSやEPMAを用いて評価する。さらに、表面の原子配列を明らかにするため、すなわち本当に(水)酸化されていないかどうか調べるため、溶液をSiあるいは炭素基板に滴下してSTM像を観察する予定である。結晶構造、膜厚み、表面化学組成に関する結果から、ナノシートの生成機構(溶解機構)に関して熱力学的および速度論的な考察を行う。 表面構造の解明に注力すると共に、電気あるいは磁気抵抗測定用の比抵抗測定装置を用いて物理特性を明らかにする。また、表面構造との相関関係についても考察する予定である。本課題では、ナノシートの応用としてLiイオン電池の負極に限定しているが、燃料電池電極、キャパシター、光触媒、固体触媒などとして幅広い応用が期待できる。そのため、溶液プロセスを用いたデバイス作製のため最適分散溶媒や分散濃度について検討する。
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