研究課題/領域番号 |
26888010
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
細野 暢彦 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 特定助教 (00612160)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | 複合材料 / 高分子化学 / 吸着化学 / 多孔性配位高分子 |
研究実績の概要 |
本課題では、生体の細胞膜に存在する膜貫通タンパク質(イオンチャネル)におけるイオン分離機構に着想を得て、多孔性配位高分子(PCP/MOF)を選択的ガス分離チャネルに見立てた斬新な機構で高選択的ガス分離を達成する「チャネル型ガス分離膜」の開発を目的としている。本年度はPCP結晶表面を重合開始点とする重合開始法の開発を目的として研究を遂行した。種々の検討の結果、PCP微結晶表面の修飾およびその表面からの重合開始は非常に困難を極めることがわかった。そのため、早い段階で対象をPCPからPCPナノフレームワーク(PCP細孔構造の最小単位)へとシフトさせ研究を展開した結果、新規ナノPCP/ポリマー複合体を得ることに成功した。詳細な反応追跡から、PCPナノフレームワーク表面からのモノマー(スチレン、メチルメタクリレート等)の重合はリビング機構で進行することが確かめられ、原子間力顕微鏡および動的光散乱測定により、得られた構造体はPCPコアをポリマーのコロナで覆ったコアーシェル構造を有していることが明らかとなった。本化合物は汎用の有機溶媒(トルエン、THF、クロロホルムなど)へ可溶であり、本化合物のクロロホルム溶液を基板上にキャスト後、剥離することで柔軟な自立フィルムを得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
種々の検討の結果、PCP微結晶表面を重合開始部位を備えた官能基で安定的に修飾することが困難であったため、チャネル部位となる対象構造物をPCP結晶からPCPナノフレームワークへとシフトさせることとしたが、これによる当初の達成目標に変更はなく、本研究の進捗は概ね順調であると言える。なお、本年度の成果については日本化学会 第95春季年会(2015)にて口頭発表1件、特許出願1件を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度(平成27年度)は、当初の予定どおり「PCP/ポリマー複合体の成形加工法の検討」および「チャネル型ガス分離膜としての機能評価」を軸として、本年度(平成26年度)で得た知見を応用し展開してゆく。具体的には、得られたナノPCP/ポリマー複合体のフィルムを種々の手法で作成し、そのナノ構造をX線小角・広角散乱法(SAXS・WAXD)、走査・透過型電子顕微鏡観察(SEM・TEM)、および原子間力顕微鏡観察(AFM)を用いて詳細に解析する。ポリマーコロナや内部PCPコアの最適化を図り、チャネル型分離膜へ適したフィルムの内部構造を探索する。最終的には、フィルムのガス透過性評価および混合ガスの分離選択性評価を行い、目的としているガス分離性能が得られることを確かめる。また、ガス分離にとどまらず、イオンの分離も視野に入れ、本研究の可能性を幅広く探索する。
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