研究実績の概要 |
本研究では,トラップや接触抵抗の低減 および新奇機能性の創出を目的とし,異種接合界面に電荷移動型自己組織化単分子膜の導入を図 る。これにより,界面に存在する単分子膜からの電荷注入を行うため,素子特性の劇的な改善・ 変調が期待されるだけではなく,電荷移動と電界効果の協創する新奇な界面が構築され,新しい 伝導機構で動作するエレクトロニクス素子の開発を最終目的としている。 平成26年度は、最初の電荷移動型自己組織化単分子膜(CT型SAMs)の官能基としてテトラシアノキノジメタン(TCNQ)に焦点をあて誘導化を行った。SAM分子の合成には至っていないものの、参考文献に詳しい記述のない反応に関しても条件も確立し、TCNQ前駆体の合成は順調に行われている。また、水分量を制御するためにグローブボックスを用いて行われる溶液法を用いた自己組織化単分子膜の作製を、実験室系において再現性よく製膜する条件を確立した。現在は、官能基を基板上で反応させる条件の検討を始めている。さらに、ジフェニルアミノSAM分子の検討も行った。アミノ基を有するSAMsは分子内ダイポールによって電荷を注入するSAMsであるが、親水性のアミノ基を官能基としているため、基板表面への電荷伝導を阻害する水分子の吸着及び有機溶媒への低いぬれ性のための塗布法による有機半導体層の構築を困難にしていた。そこで末端基をジフェニルアミノ基とすることでこれらの問題を克服することに成功している。 研究室の立ち上げとしては、嫌気雰囲気下での合成を行うガスラインや自己組織化単分子膜(SAMs)による表面修飾を比較測定するための接触角計の導入を行い、上記の成果を上げることができた。まだ多少の不足はあるものの、一通りの合成実験及びSAMs製膜実験を行う環境はほぼ整ったと言える。
|