研究実績の概要 |
イオンソースと質量分析計 (MS) の結合条件について基礎検討を行った。石英キャピラリーをCO2レーザーで引き延ばすことでnanoESIエミッターを作成し, エレクトロスプレーイオン化法 (ESI) を用いてウシ血清アルブミン (BSA) のトリプシン消化物ペプチドを試料としてシグナルをモニタリングした。nanoESIエミッターはマグネット固定型XYZステージでMS本体に固定し, シリンジポンプを利用して流量や電圧などを最適化して分析を行ったところ, 50 zmol程度のBSAトリプシン消化物を検出することに成功した。続いて並列化CE-MS条件についてソースとMS装置との①距離, ②角度, ③流速, ④溶媒の種類, ⑤試料などのパラメーターを最適化した結果, 流量500 nL/min以下程度で感度を低下させずに試料を検出できることが示唆された。また, 質量分析計の無償貸与を受けることで, 共用のMSが使用されている際にも実験を遂行できる環境を整備した。 続いて濃縮条件を最適化するために, 自動CE装置を利用してBSAトリプシン消化物分析を行った。感度の低いUV検出を利用しても1ppm程度の試料を検出することができた。このシステムにおいて今後pH, イオン強度, 電気伝導度, キャピラリーのコーティング法, インレットとアウトレットの緩衝液の組み合わせなどについて最適化を機械的に進められる研究環境を整備した。
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今後の研究の推進方策 |
試料濃縮法の最適化を中心に実験進捗が予定より遅れているが, 人員拡充や装置導入などの研究体制の整備は順調に進捗している。2015年度はこの新体制の下, 2014年度に完了できなかった課題も合わせて推進する。 具体的にはまずCE-MS分析の前の1次元目の分離の最適化を行う。逆相カラムを用いて一次元目の分離・脱塩を行い, 試料濃縮法によってペプチドを濃縮して高感度なCE-MS分析を行う。 試料濃縮法の最適化においては申請者がノウハウを持つLVSEP法に加え動電過給濃縮法やdynamic pH junction法などのペプチド濃縮法を組み合わせて利用する。 最終的に, 開発した並列化CE-MSを実際のプロテオミクス分析へ利用する。大腸菌溶解液由来ペプチドを逆相Stage Tipカラムで分画し並列化CE-MSで分析し, 従来法の半分以下の分析時間で従来以上のペプチド同定数の実現を目指す。
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