研究課題/領域番号 |
26889002
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
藤澤 剛 北海道大学, 情報科学研究科, 准教授 (70557660)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | 光通信 / 光デバイス / 光ファイバ / 計算機科学 |
研究実績の概要 |
モード分割多重伝送技術を用いた通信用光デバイスに関する研究として、H26年度は以下の2項目に関して研究を行った。 (1)変調器、および、伝送路の物理的特性解析理論を融合させたモード多重伝送解析技術の確立 異なるモード間での結合が生じる、数モードファイバの伝送特性を解析するために、マイクロベンドなど、モード間結合を生じさせるファイバ中での摂動を取り入れた、伝送特性解析法を新たに開発した。具体に、フィールド結合モデルに基づき、プリンシパルモードと呼ばれる、マルチモードファイバ特有の固有状態の解析により、モード間結合が生じる中での、各モードの群遅延解析技術を確立した。その際、ファイバ断面の解析には高精度フルベクトル有限要素法を用いることにより、任意形状の数モードファイバの解析が可能な汎用解析技術として開発している。また、変調器解析理論として、SiなどIV族系材料を扱うことのできる量子構造設計理論の構築にも成功した。 (2)モード制御光波回路極限性能追求のための解析設計理論の構築 平面光波回路(PLC)型2モード合分波器に関して、マルチモード入出力を含む、モード制御光波回路に適用可能な波面整合法を新たに開発した。開発した手法を用いて、PLC型、LP01/LP11、2モード合分波回路の波長依存損失の低減、究極性能を実現する導波構造の探索を行い、波面整合設計をしない場合に比べて、大幅に波長依存性を低減する構成を見出した。開発した手法はLP01/LP11モード以外の合波器にも適用可能であり、モード制御光波回路の汎用設計技術として用いることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
H26年度の目標のうち、(1)変調器、および、伝送路の物理的特性解析理論を融合させたモード多重伝送解析技術の確立、については、任意形状を有する数モードファイバ中での、マイクロベンドなどの摂動によるモード間結合をモデリングする技術の開発に成功した。この解析技術は、研究代表者が別途開発している変調器解析理論との融合が可能である。本目標に関して、海外学術雑誌に1篇の論文を発表、2014年度内に電子情報通信学会の研究会、総合大会、支部会において6件の口頭講演として発表しており、「おおむね順調に進展している」と判断した。 (2)モード制御光波回路極限性能追求のための解析設計理論の構築、に関しては、H26年度の目標であったモード制御光波回路解析設計理論として、マルチモード入出力対応可能な波面整合法の開発に成功し、なおかつ、H27年度以降の目標であった、極小波長依存モード制御光波回路の構成について検討し、初期検討結果を外部発表できた。これらの成果については、共同研究者である日本電信電話株式会社と共願で特許を出願済み、また、2015年3月の電子情報通信学会で成果を発表しており、今後、国際会議投稿、論文化を進めていく。さらに、モード変換器の1種である偏波変換器の性能向上についても検討し、こちらも、2015年3月の電子情報通信学会で成果を発表、これらのことから「当初の計画以上に進展している」と判断した。 そのほか、本課題に関連した学術発表も行い、H26年度全体としては、「当初の計画以上に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
H27年度では、H26年度の業績を踏まえ、申請書記載の以下の2項目を達成することを目標とする。 (3)数モードファイバにおける、中・短距離向け電界吸収型変調器性能の明確化 H26年度に開発した手法をもとに、数モードファイバ中でのモード間結合を考慮した場合の、電界吸収型変調器に求められる性能を明確化する。プリンシパルモード解析に基づく、数モードファイバのインパルス応答、群遅延広がりの解析を行い、モード間クロストークが存在する伝送路上で、特にチャーピング特性に着目し、伝送距離を最大化する変調器性能を明確化する。 (4)極小波長依存モード制御光波回路の提案 H26年度の開発した波面性合法に基づくモード制御光波回路設計技術を用いて、極小波長依存2モード合分波器の構成を追及する。各種の導波路コアの比屈折率差、導波路高さに対して、2モード合分波器の最適構造探索を行い、非対称方向性結合器型、LP01、LP11の2モード合分波回路の極小波長依存設計指針を確立し、その最適構造を提案することで、実用に耐えうるモード合分波回路の実現を目指す。
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