研究課題
近年の高温超伝導REBCO線材の実用化に伴い、無冷媒超伝導マグネットの開発が急務である。特に、高温超伝導コイルにおける局所的発熱（ホットスポット）の発生による線材劣化を防止する技術開発が必要不可欠である。本年度は、前年度に立ち上げた低温強磁場化大電流温度分布可視化装置を用いて、REBCOテープとREBCOコイルにおけるホットスポットの観察をおこなった。まず、REBCOテープに対し臨界電流以下の定電流を流した状態で、テープ上に設置したヒーターを発熱させることによってホットスポットを強制的に発生させた後、熱暴走過程での常伝導伝播を観察すると同時にテープ内電圧分布を測定した。結果、電圧分布と温度分布から求めた常伝導伝播速度は定量的に一致し、温度分布可視化装置の妥当性を検証した。また分解能について、50 μm、0.5 K/√Hz程度の温度・空間・時間分解能が得られ、ホットスポットの可視化に十分な性能が得られた。この分解能は、クエンチ検出に関して十分であるが、コイル表面のみしか観察できないという欠点が挙げられる。次に、REBCOコイルに対し過電流を流すことで局所的に特性を劣化させてから、劣化箇所の臨界電流を超えた電流で保持しホットスポットを観察した。結果、ホットスポットは半径方向より動径方向に伸びた形状で現れた。その比は15程度であり、局所的なホットスポットから周辺への異方的な熱伝導パスを明らかにすることに成功した。本実験で用いたコイルはエポキシ樹脂で含浸されており、今後、最近提案されたターン間離形を施したコイルに対しても本研究で得られた技術を用いて熱伝導パスを解明することが期待される。また、離形材料を工夫することによって熱伝導の異方性を小さくすることにより、ホットスポットから周辺への熱伝導を増大させることが可能であることが示唆される。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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IEEE Trans. on Supercond.
巻: 26 ページ: 4601704
10.1109/TASC.2016.2540918
