コンクリートの諸性質を解明するために,多くの研究者によってセメントペーストや合成C-S-Hの微細構造を同定する実験やモデル化の検討がされてきた。特に,コンクリートの乾燥収縮性状は,C-S-Hと水との相互作用により大きな影響を受けるため,セメントペーストや合成C-S-Hの水蒸気吸着等温線の測定およびその分析による微細構造のモデル化が行われている。今年度は,長期乾燥を受けたセメントペーストおよび異なるCa/Si比をもつ合成C-S-Hの水蒸気吸着性状の分析を行った。 セメントペーストの長期乾燥における水蒸気吸着性状の変化を取得することを目的として,飽水から11%RHまでの湿度環境で6ヵ月間調湿を行ったセメントペーストの水蒸気吸着等温線を取得し,拡張BET理論を用いて吸着等温線全域におけるセメントペーストの水蒸気吸着性状を分析した。その結果,セメントペーストの水蒸気吸着等温線は,湿度環境に関わらず,IV型の吸着パターン,ヒステリシス,低圧ヒステリシス,脱着過程の40%RHの特異点を持ち,水蒸気吸着等温試験中に吸着サイト量,親水性,最大吸着層が変化する傾向が確認された。 セメントペースト中のC-S-Hとの比較を目的として,Ca/Si=1.50~2.24までのC-S-Hの水蒸気吸着等温線を取得し,拡張BET理論を用いて吸着等温線全域における合成C-S-Hの水蒸気吸着性状を分析した。その結果,合成C-S-Hの水蒸気吸着等温線は,Ca/Siモル比に関わらず,セメントペーストと同様に,IV型の吸着パターン,ヒステリシス,低圧ヒステリシス,脱着過程の40%RHの特異点を持ち,水蒸気吸着等温試験中に吸着サイト量,親水性,最大吸着層が変化する傾向が確認された。
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