研究課題/領域番号 |
26889014
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
中島 昌一 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90734210)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | CLT / 木ねじ / 降伏荷重 / EYT / 接合部 / 大規模木造 / 面圧実験 / 多数本うち接合 |
研究実績の概要 |
本研究では、クロス・ラミネイティド・ティンバ(CLT)接合部の力学性状を評価し、設計法を確立することを目的としており、本年度は以下の研究を実施した。 1.CLT木ねじ接合部の降伏荷重推定式の誘導と評価 母材と接合具を完全弾塑性体と仮定する、いわゆるヨーロッパ型降伏理論に基づき、降伏荷重の推定式を誘導した。推定に必要な材料特性値である木ねじの材料強度および各層のラミナの面圧強度は、それぞれ、木ねじの引張実験、木ねじねじ部のCLTに対する面圧実験を実施して得た。比較のためにCLTの平均面圧強度を求める実験も実施した。CLTの推定式にラミナごとの強度を用いることにより、既往の式に平均面圧強度を用いた場合と比べ、精度のよい推定が可能であることが明らかとなった。 2.CLT木ねじ接合部強度・剛性に与える接合具本数の影響 木ねじの面圧抵抗について、木ねじを梁とし、木材を短軸バネと仮定する弾塑性床上の梁モデルに基づく有限要素解析を実施し、木ねじが一面せん断抵抗する際の面圧抵抗と引き抜き抵抗の割合を明らかにした。解析には1.で実施した素材実験結果を用いた。また、木ねじを多数本用いた接合部の実験結果と比較し、木ねじを1本用いたときと比べ、多数本用いた場合には、1~3割程度の最大荷重の低下がみられること、抵抗において木ねじの引き抜き抵抗が支配的になると考えられる変形が10mm程度のときに最も低下が大きいことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、クロス・ラミネイティド・ティンバ(CLT)接合部の力学性状を評価し、設計法を確立することを目的として、実験を中心に研究を進めてきた。木ねじ1本の性能については、概ね明らかとなった。既往の木ねじ1本を用いた接合部実験では、胴部の破断が早期に生じてしまい、実際の接合部性能と異なることが問題であったかが、鋼板の拘束条件が影響を変更することで実際の接合部性能に近い1本あたりの性能を得ることができた。 さらにCLT木ねじ接合部は、引き抜き抵抗によって降伏荷重の2倍以上抵抗の最大荷重を発揮していることが明らかとなっており、CLT接合部特有の破壊である「ディラミネーション」が引き抜き抵抗や群の効果などによって助長されている可能性があることが定性的に晃良となった。 この群として抵抗する木ねじの性能低減について、定量的に評価するには至っていない。ただしこの知見は、次年度に実施予定のドリフトピン接合の実験計画に反映されている。 木ねじ接合部においては、面圧抵抗と群の効果について【研究実績の概要2.】で示したように、引き抜き抵抗と面圧抵抗の2つが複合してはたらいていると予測された。そこで次年度は引き抜き抵抗がなく面圧抵抗のみによって一面せん断抵抗するドリフトピン接合を対象とすることで群の効果をより明確にする。同時に引き抜き抵抗のみが発生する実権も実施し両者の違いを明確にする。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、クロス・ラミネイティド・ティンバ(CLT)接合部の力学性状を評価し、設計法を確立することを目的としており、今後以下について研究を進める。 1.木ねじが引き抜き抵抗する割合の実験による検証 これまでの研究実績で、実験による検証ができなかった、木ねじの一面せん断抵抗における引き抜き抵抗の占める割合について、埋め込み角度をパラメータとした引き抜き実験により検証する。 2.CLTドリフトピン接合部強度・剛性に与える接合具本数の影響 CLTドリフトピン接合部については、【研究実績の概要1.】で示したような接合具1本あたりの性能は、申請者らの過去の研究ですでに概ね明らかとなった。そこで、ドリフトピンについては、本数の影響をドリフトピンの配置をパラメータとした接合部の引張実験によって検討する。ここでは、接着面の抵抗などで用いられるフォルカーセンの理論に基づくる荷重変形関係の低減がみられるかに着目し、列方向の本数をパラメータとする。さらに、建築物の杭基礎でみられる群杭効果によって、性能低減があるかどうかを明らかにするために、少数のドリフトピン間距離をパラメータとした実験も実施する。 3.繊維角度依存性の評価と設計への応用 上記1.の検討において、CLT特有の現象である繊維角度依存性の小ささを定量的に評価すするため、繊維角度をパラメータとした接合部の有限要素解析を実施する。接合部を模したモデルの解析と実験による検証により、接合部設計において繊維角度依存性をどの程度考慮すべきか、無視できるほど小さいのかを検討する。
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