最終年度は、前年度に実施した都市計画諸制度および住民組織形態に関する資料分析およびヒアリング結果をもとに、都市コミュニティ・ガバナンスを促進するために重要な支援制度の提案に向けたデータの収集(ヒアリングおよびアンケート調査)および分析と執筆活動を行った。 分析の結果、バンコクでは低所得者層コミュニティに限らず、中間層が居住する住宅地においても住環境改善の意識や活動の広がりが確認され、特に子育て世代を中心にコミュニティという共通意識が生まれていることが確認された。所得層を超えた住民組織を中心とした活動のネットワーク化は、これまで不透明さが高かった住民組織運営や行政との関係をよりクリアにし、信頼関係を構築している傾向が明らかになった。ビエンチャンにおいては、急速な都市化と外資系産業の一極集中により、市街地における近隣間の関係が希薄化するなか、歩道を中心とする公共スペースの環境問題に対しては、市民団体や大学など外部組織と連携して活動を活発化させていることが明らかとなった。低所得者層コミュニティにおいても外部組織との連携が強く、農村部に比べてコミュニティ内活動における住民参加率も非常に高いことが明らかとなった。両都市の事例分析より、都市コミュニティにおける活動は、地域内の他コミュニティおよび市民団体や大学との連携により住民組織の主体性および透明性を高めることが明らかとなり、都市レベルにおける公平なネットワーク支援によりコミュニティ・ガバナンスを促進させることが重要であることを提案した。 これらの成果は、本研究期間において国内学会論文1本、英語論文1本、大学学術誌1本、著書1本に反映し、また最終成果として28年度都市計画学会国際シンポジウムおよび学術論文発表に投稿中である。
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