本研究の目的は、高感度・リアルタイム測定が可能な表面プラズモン増強蛍光(SPF)バイオセンサを開発し、疾病の指標となるバイオマーカーを簡便に検出するための要素技術を構築することである。採取した生体サンプルから分離・抽出することなく、高選択・高感度に検出することができれば、疾病の早期発見・治療が可能となり、予防・完治へ多大な貢献をもたらすと考え、研究を進めてきた。27年度では、(1)SPFバイオセンサとその制御・解析システムの構築と、(2)モデルサンプル(単層リポソーム)を用いた蛍光バイオセンサの評価を行った。 SPFバイオセンサの構築では、制御システムや得られたデータを解析するシステムを構築し、測定に必要な角度スキャン、キネティクス測定、ステージ移動の制御が可能となった。ハードウェア面でも、反射光と蛍光との同時計測を可能にし、フローセルを装着することで、サンプルのリアルタイムな交換やリンスを行うことができるようになった。続いてマイクロパーティクルのモデルサンプルである小型単層リポソーム(SUV)を用いたSPFバイオセンサの評価を行った。初めに、センサ表面(金薄膜表面)をポリエチレングリコールとビオチン混合チオールの自己組織化単分子膜で修飾し、ストレプトアビジンが結合したアネキシンA5(60 μg/mL)をビオチンへ吸着させた。その後、蛍光色素標識され、ホスファチジルセリンが表面上に現れているSUV(1-10 ng/mL)を測定した。その結果、アネキシンA5の吸着に伴い共鳴角のシフトが見られた。また、SUVがセンサ表面上のアネキシンA5へ結合する様子が、蛍光の増加として観察されたことから、構築したSPFバイオセンサの有用性が示された。以上のように、当該年度に予定していた(1)の研究目的を達成し、(2)の研究目的もほぼ達成できた。
|