本研究では,熟練オペレータのパラメータ調整プロセスをデータ指向型制御系設計の観点から明らかにし,制御分野で指摘されている理論と応用のギャップを埋める一制御系設計法を示すことである。27年度の研究における実績は以下の通りである。 I: エキスパート制御系の設計手法の確立:複数の熟練者による操業データをデータベースに蓄積し,これらの技能をPID制御器として表現し,さらに要求者の制御仕様に応じて,これらのPIDパラメータを変更するエキスパート制御系の設計手法を確立し,国際会議や電気学会主催の研究会で発表するとともに,これらの内容をまとめて,現在,国際学術誌に投稿中である。 II: 相関係数を用いたデータ駆動型制御系設計手法の提案:熟練オペレータのパラメータ調整プロセスを明らかにするにあたり,データベースに蓄えられた大量のセンサ情報の中から,熟練者がPIDパラメータを決定するために必要な情報のみを抽出する必要があった。この抽出アルゴリズムを確立するための研究として,相関係数を用いた新しいデータ抽出アルゴリズムを提案し,従来のデータ駆動型制御系設計において,制御系設計に必要なデータのみが抽出され,制御性能が改善されることを示した。本研究成果も,現在,国際学術誌に投稿予定である。
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