本研究においては、リチウムイオン電池用の高品質の稠密結晶層電極材料を対象にその輸送特性を測定解析した。信州大学の手嶋研究室は、フラックス法による単結晶の成長に圧倒的な強みを持っており、同法によりLiCoO2やLiNi0.5Mn1.504等の材料で稠密結晶層電極や固体電解質の合成に成功している。フラックス法で成長したLiCoO2(以下LCO)では、比較的大きな単粒子結晶を得ることができる。LCOは、準2次元的な結晶構造を反映してフラックス法で成長した単粒子結晶は薄い鱗片状である。この材料を対象に面方位の選択性のある伝導特性の測定系を立ち上げるとともに、電子伝導に関して測定・解析を行った。また250℃まで測定可能なイオン伝導測定系を立ちあげた。 [電子伝導の解析]まず、X線回折測定から試料のLCO面直がc軸であることを確認した。c軸方向の電子伝導の解析を行うため、報告されている文献を参考に鱗片状の単粒子の上下を挟み込むコンフィグレーションでイオンブロッキング電極を銀ペーストを用いて形成した。試料の測定温度25℃~100℃の範囲で、周波数1 Hz-5 MHzの周波数範囲で、インピーダンスを測定した。 [イオン伝導の測定試料試作]当初の研究の目的に従い、固体電解質と固体正極活物質の固体/固体界面を有する構造を有するイオン伝導測定用の電子ブロッキング電極を有する測定試料の構造を検討した。あわせて、イオン伝導しにくい材料系においても測定インピーダンスの上昇を抑制することを目的に、測定温度範囲を高温側に広げることを目指した。検討の結果、集電極としてLi-Al合金(モル比で0.5:0.5 ~0.95:0.05)を用い、固体電解質としてLi2O-Al2O3-SiO2-P2O5-TiO2の薄膜シートの積層体でLCOを挟み込むことで最高250℃までのイオン伝導の測定が可能となった。
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