研究課題/領域番号 |
26889040
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山出 美弥 大阪大学, サイバーメディアセンター, 招へい研究員 (40735510)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | 意識構造 / テキストマイニング / ブラウンフィールド / スティグマ / 新聞記事 / Twitter |
研究実績の概要 |
本研究では福島の原発事故以降のブラウンフィールド再生を目的に、インターネット上に掲載された土壌汚染に関する情報の発信・伝達の状況を分析するとともに、当該事故後の市民の意識構造からブラウンフィールドの再生に資するスティグマ削減のための知見を得ることを目的とし調査、分析を行った。本年度は2つの研究課題のうち②土壌汚染に起因するスティグマの削減に関する課題に対して、情報の発信側(新聞記事)と情報の受け手側(Twitter記事)のテキストデータを時系列に収集し、その意識構造について分析した。その結果、事故発生直後では両記事とも「原発事故の発生に関する事柄」についての記述が多く出現していたが時間の経過とともにTwitter記事では「放射能汚染への不安」「避難区域」「地震による被害状況」「食品の汚染」などへと関心が変化したことが明らかとなった。一方、新聞記事では「政治」「電力の供給」「放射能汚染」に関する事柄が抽出され、新聞記事とTwitter記事における齟齬が明らかとなった。 また上記で得られた結果をもとに、比較的除染が進んでいる地域におけるステークホルダーへのインタビュー調査を避難指示解除準備区域である福島県川俣町山木屋地区の住民を対象に行い、除染の現状とブラウンフィールド再生に資する具体的なスティグマ削減のためのミーティングを実施した。その結果、除染がなされたエリアにおいては一部の農業が再開され人体への影響がない花の栽培や農業体験、農家民宿などを通した復興への取り組みが活発に行われていることなどが明らかとなった。そして放射脳汚染への理解とスティグマ削減には放射能汚染に関する教育や観光などと結びつけた活動や現状を正確に知ることが重要であり、それらが復興への一つの促進要因になり得るのではないかと推測できる。また、これまでの研究結果を取り纏め平成27年度に学会発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ブラウンフィールドの再生に資するスティグマ削減のための基礎的要件を明らかにするため、ブラウンフィールドの再生に関してグリーンインフラの概念を取り入れ、土壌汚染地を産業跡地から文化と歴史の継承地として利用価値を転換させた英国ノースウィッチウッドランズでの先進事例を調査し、福島におけるシビアな土壌汚染に起因するブラウンフィールド再生への手がかりを得ることを目的として研究を遂行していた。しかしながら、航空会社のストライキにより調査困難となり、国内で得られる情報が極端に少ないため海外事例との比較調査について遅れが生じている。海外事例における担当者への電子メールを使用したアンケート調査については現在も行っており情報の開示を求めている。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、原発事故後に発信された情報から土壌汚染に対する意識構造を日本全国を対象に把握し、スティグマ削減のための要件を探ってきた。今後はこれまでと同様、福島県川俣町山木屋地区を対象とし、当該地区における住民を対象としたワークショップを開催するとともに住民の自主活動に着目し、避難が解除された後の意識構造についてまとめる。また得られた結果をもとに、個々の意識における齟齬の明確化とスティグマの変遷を検証する。 また、上記目的を達成すると同時に、英国で行われているグリーンインフラの概念に沿ったブラウンフィールドの再生事例について現地調査を行い、当該地区の歴史的背景から現在の状況について土地利用変遷と再生基本計画に焦点を当て調査、分析し、グリーンインフラの概念を用いたブラウンフィールドの再生手法が福島の復興に役立てられるのか、その適応可能性について考察していく。 また、得られた知見を学会誌などに学術論文として発表する。
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