本研究はMEMSセンサを用いた高速局所温度計測を通じて合体気泡域における核沸騰熱伝達メカニズムを調べることと,微細溝内における毛管力による液体移動を利用して気泡底部のドライアウトを防ぎ伝熱促進する技術の開発を目的としている. 本年度は研究環境整備のため,高速データ取得用のデータロガーやファンクションジェネレータ等の実験に必要な機器を購入した.熱伝達メカニズム研究については,多数の薄膜測温抵抗体,二つの気泡発生トリガー,薄膜ヒーターを持つ,気泡底部局所温度計測用のMEMSセンサの設計,製作を行った.計画よりもセンサ製作に時間を費やしたため,センサパターンの妥当性検証のための予備実験を行うことができなかった.しかし,新しい環境でMEMSセンサが製作可能であることが確認できたことは大きな収穫であった. 伝熱促進技術研究では,ウェットエッチングを用いてシリコンウエハに幅約50ミクロン,深さ約25ミクロンの微細溝を格子状に多数加工した沸騰伝熱面を製作するとともに,ポリカーボネート製の沸騰チャンバを製作した.濡れ性向上のためにSiO2を表面に製膜した微細溝付き伝熱面上に液滴を滴下すると毛管現象により,液体が微細溝内を移動し,液滴がぬれ広がる様子が観察された.しかし,沸騰チャンバ内に伝熱面を取り付ける実験準備段階および沸騰試験中に伝熱面の濡れ性が劇的に劣化してしまい,伝熱促進が得られなかった.今後は,濡れ性劣化の要因を究明して対策を施す. 最終年度(二年目)に研究代表者が在外研究で渡米するため本課題の遂行が困難になり本課題は初年度で終了となるが,引き続き当初の研究目的を達成するため本研究を続けていく.
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