本研究ではエネルギーを自己供給することで稼動可能なアクティブ制振ユニットの構造系(ばねやダンパー)と制御系の同時設計に着目した制御系設計を提案した。 Ⅰ. シミュレーションによる制御理論の構築・検証結果:構造について、免震装置を2段に重ねた2層構造のモデルを考え、構成要素(ばねやダンパー)の最適化と制御則の検討を行った。標準波(短周期)や観測地震動(短周期・長周期)を用いた検討により、発生する可能性のある地震動の周波数帯域の広さに対して2層構造は共振による大振幅を回避できる可能性があることを示した。また、その際、エネルギーを自己供給することで稼動可能なアクティブ制振ユニットを1層で実現できる一定の可能性についても明らかとなった。 Ⅱ. 実機実験による検証結果:実機の構成について、申請時の装置の構成案とは異なり、スライダーとラック・アンド・ピニオンを用いた構成として実現した。外乱や制御の制約条件、物理的制約条件についての知見を得、実用化を見据え制御理論を改良した。 また、本提案装置は地震が終わった直後には初期値以上の充電状態に戻すことができることを示したが、実際にコンデンサ等での放電を考えた場合、他の環境発電技術を併用し、地震時に速やかに稼動開始できるシステムとすることも今後必要となってくると考えられる。 2016年の熊本地震においても停電が発生し、その復旧には時間を要した。本研究は余震の続く被災地の電力不足にも貢献できるものと考える。
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