ヒ素(As)は水環境中に存在する極めて毒性の高い汚染物質であり,世界中の人々の健康リスクを高めている.しかしながら高選択的かつ高感度なヒ素簡易分析法は考案されていない.応募者は最近,蛍光プローブが重金属の簡易分析法に有効であることを実証した.本研究の目的は,水環境中ヒ素の簡易定量に向け,新規ヒ素特異的蛍光プローブを開発することである.具体的には(1)ヒ酸(AsO43-)を特異的に認識し,蛍光特性を変化させる蛍光プローブを開発する,(2)開発した蛍光プローブの性能評価を行う.この蛍光プローブが開発できれば,簡易にヒ素濃度を定量することができ,汚染の早期発見や水環境中ヒ素の動態解明にも貢献するものと考える. 本年度はヒ素特異的蛍光プローブの合成スキームの構築に取り組んだ.その結果,蛍光プローブ母骨格候補であるボロンジピロメテンを合成することに成功した.また,実際の水環境試料へ適用することを考慮し,蛍光プローブ母骨格を数種類用い,水環境中の溶存有機物の影響を調べた.その結果,蛍光プローブ母骨格内の特定の官能基と腐植物質とが特異的に相互作用することが明らかとなった.また,内部フィルター効果は見られなかった. 国外において,2014年12月に国際会議であるIWA 7th International Young Water Professionals Conferenceにて口頭発表を行った.また,国内では2014年9月に第17回日本水環境学会シンポジウムにて口頭発表,2014年12月に第51回環境工学研究フォーラムにて口頭発表,2015年3月に第49回日本水環境学会年会にて口頭発表,以上3件の口頭発表を行った.
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