本研究では過熱水蒸気を用いてセルロースを分解し、高収率でレボグルコサンを生成するプロセスの開発と反応機構の解明を行った。セルロース250mgを用いて反応条件(過熱水蒸気送液速度、反応温度、反応時間)を変えて試験を行ったところ、過熱水蒸気流通速度0.5ml/min、300℃、1時間においてTOC収率88%、レボグルコサン収率41%を達成した。一方で経時変化をとっても、グルコースはほとんど生成せず、レボグルコサン収率は常にTOC収率の約半分であった。このことからセルロース中のグルコース2分子につき1分子がレボグルコサンになり、もう1分子が分解して水溶液中に溶解する反応機構が考えられる。 また製造方法の異なるセルロースを基質に用いたところ、レボグルコサン収率がほぼ0%になる種類が認められた。この原因としてリグノセルロースからセルロースを分離する際のアルカリ蒸解によってアルカリ金属が含まれていることが挙げられる。レボグルコサン収率41%を達成したセルロースにナトリウムを添加して反応試験を行ったところ、わずか0.1wt%のナトリウムが含まれるだけでもレボグルコサン収率がほぼ0%まで低下した。この際、一酸化炭素と二酸化炭素のガス収率と固体残渣量が増加したことから、ナトリウムはC-C結合やC-O結合を切断する触媒として機能していると考えられる。さらに塩酸処理によってナトリウムを除去したところ、レボグルコサン収率が40%程度に回復した。
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