本研究は、無定形炭素質の球状ナノ粒子から成るカーボンブラック(CB)表面上に担持される金属触媒ナノ粒子に関して、CB表面にナノスケール構造を作製することにより発現する触媒ナノ粒子の凝集抑制機能について、その検証を目的としたものである。平成26年度は、炭化水素ガスまたはアルコールを用いた高温熱化学反応によるCBの表面構造作製方法を確立した。平成27年度は、得られたCBの表面上に白金ナノ粒子を担持する手法を構築し、透過型電子顕微鏡を用いて高温環境下で白金ナノ粒子の直接観察を行うことにより、CB上での安定性を評価した。
エタノールを用いてその熱分解をCB表面上で行うことにより、CB表面にナノ表面構造が発達することを電子顕微鏡観察で明らかにするとともに、ラマン分光計測により結晶化度の高い表面構造が形成されること、さらに熱重量分析を用いた酸化反応速度の検討により耐酸化性が大きく向上することを実証した。メタン熱分解により得られたCB表面構造の特徴と比較するとともに、エタノール熱分解反応過程におけるガス組成の分析結果を通じて、形成されるCB表面構造の炭素源依存性を示した。
さらに、白金ナノ粒子をCBが存在する分散液中にて合成することにより、作製されたCB表面の突起部に白金ナノ粒子が単分散状態にて担持され得ることを明らかにした。試料を透過型電子顕微鏡の内部で最高温度摂氏800度Cまで加熱し、白金ナノ粒子の凝集過程について直接観察を行った。その結果、白金粒子の初期凝集状態およびCB担体表面上の位置に依存した動的挙動を明らかにし、CB平坦部に単分散担持された白金ナノ粒子はCB担体表面上を移動し低温度域で凝集したのに対し、CB表面突起部に担持された白金ナノ粒子は顕著な表面上の移動がみられず、担体表面構造に依存した白金ナノ粒子の凝集挙動を確認することができた。
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