研究実績の概要 |
本研究では,劣悪な暑熱環境が問題となる都市部における熱的快適性を評価するための新しい計測・評価システムを開発した.開発した計測・評価システムは,(1)ウェアラブルな熱環境・人体生理応答連続モニタリングシステム,及び(2)市民の快適度・温熱感を効率的に収集するスマ-トフォンアプリケーションである. ウェアラブルモニタリングシステムは,熱環境を評価する上で必須である気象因子,気温,湿度,風速,短波・長波放射量を評価する.これらの気象5因子より,人体熱収支を解き,人への熱負荷量を評価することが可能となった.既存気象センサは,固定点観測を念頭に設計されておりウェアラブル用途に適さないため,新たな計測原理を開発した(Globe Anemo-radiometer, Nakayoshi et al, 2015).また,生理因子として,温熱生理を評価する上で欠かせない皮膚温度,深部体温を測定する.屋外環境においては,気象場の変動が皮膚温度測定の大きな誤差要因となりえるが,開発した皮膚温度センサは気象影響を排除し,高精度に皮膚温度を評価することができる(鈴木・仲吉,2016). スマートフォンアプリケーションは,ユーザーの感じる暑さ・寒さの感覚や快適感覚を収集する.市民の気象に対する体感値が入力時の位置・時刻とともに端末に記録される.本スマホアプリを用いた被験者実験から,市民の気象に対する体感値を大量に収集することで,都市街区の熱環境を評価できる可能性が示唆された(酒井ら,2016). 本研究により開発された機器群は,都市環境場の評価に貢献が可能と考えられる.
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