研究課題/領域番号 |
26889060
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
古水 雄志 崇城大学, 生物生命学部, 助教 (80735829)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | 人工細胞膜 / 形質転換 / 腫瘍原性 / 肝芽細胞 / 肝幹細胞 / 再生医療 / 発がんリスク / ハイブリッドリポソーム |
研究実績の概要 |
本研究では、ハイブリッドリポソーム(HL)を用い、肝幹細胞(肝芽細胞)を誘導する過程で発現する腫瘍原性肝幹細胞の除去について検討したところ、下記の知見が得られた。 1)ジミリストイルホスファチジルコリン (DMPC) 及びミセル分子として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル (C12(EO)23)からなるHL(DMPC/C12(EO)23)を調製した。HLの膜物性は、100nmの膜直径で長期間安定な膜を維持できた。 2)酪酸ナトリウム(SB)1 mM をヒト胎児由来肝(Hc)細胞に8日間処理することで肝幹細胞の一種である肝芽細胞を誘導し、この時、発現する腫瘍原性肝幹細胞について、軟寒天コロニー形成法により評価した。その結果、SBをHc細胞に処理することで、未処理のHc細胞と比べ、コロニー形成数が有意に増大し、腫瘍原性が強く示唆された。 3)2)の結果から、腫瘍形成が示唆されたSB処理Hc細胞に対して、HLを加え前培養したところ、コロニー形成数が有意に低下することが明らかになった。これらの結果は、HLは、SB処理により誘導された肝芽細胞に対して、腫瘍原性を示す細胞を選択的に除去できる可能性を示すものである。 4)1mM SB処理により誘導されたHc細胞に含まれる肝芽細胞の割合を調べるため、肝芽細胞マーカーとして、EpCAMを用いたフローサイトメトリー解析を行ったところ、約50%の肝芽細胞率の増加が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)HLの膜物性は、100nmの膜直径を長期間維持できた。 2)SBをヒト胎児由来肝(Hc)細胞に処理することで、未処理のHc細胞と比べ、コロニー形成数が有意に増大し、腫瘍原性が強く示唆された。 3)HLは、SB処理により誘導された肝幹細胞に対して、腫瘍原性を示す細胞を選択的に除去できる可能性を示すものである。 4)1mM SB処理により誘導されたHc細胞に含まれる肝芽細胞の割合を調べるため、肝芽細胞マーカーとして、EpCAMを用いたフローサイトメトリー解析を行ったところ、約50%の肝芽細胞率の増加が認められた。
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今後の研究の推進方策 |
1)Hc 細胞をSB 処理する過程で発現する形質転換細胞は、がん化した細胞膜と同様の性質を示すと仮定し、コントロールのHc 細胞とSB 処理したHc 細胞の膜流動性を蛍光偏光度測定装置を用いて測定する。 2)蛍光脂質(NBD-PC)をHL に含有することで、HL の特異的な融合・蓄積現象を全反射蛍光顕微鏡、共焦点レーザー顕微鏡およびフローサイトメーターを用いて検討する。 3)in vivo での腫瘍形成能を検討するため、免疫不全マウスを用いた腫瘍形成試験を実施する。
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