本研究では、ハイブリッドリポソーム(HL)を用い、肝幹細胞(肝芽細胞)を誘導する過程で発現する腫瘍原性肝幹細胞の除去について検討したところ、下記の知見が得られた。 1)肝幹細胞を誘導するため、酪酸ナトリウム(SB)を胎児肝細胞に加えたところ、肝芽細胞マーカ(EpCAM)の増大とともに、コロニー形成数の増大が示され、腫瘍原性肝幹細胞の発現が示唆された。 2)肝幹細胞を誘導する際にHL(DMPC/C12(EO)23)を加えたところ、HL濃度依存的にコロニー形成数を抑制し、特に0.7mM HLではコロニー形成数がほぼ認められなかった。 3)がん細胞膜は、正常細胞膜と比べ、膜構造が変化し、流動性が大きくなることが知られている。そこで、肝幹細胞を誘導する際、膜流動性を測定したところ、膜流動性の増大が観測され、がん化の可能性が示唆された。 これらの結果より、HLは、腫瘍原性肝幹細胞に対して、細胞レベルで発がんを防ぐ可能性が示唆された。今後、HLの再生医療への応用に向け、動物レベルで腫瘍原性を評価する必要があると考える。
|