研究課題/領域番号 |
26889068
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
瀬戸 春樹 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 核融合研究開発部門 六ヶ所核融合研究所, 博士研究員 (90733692)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | プラズマ・核融合 / 周辺プラズマ / プラズマ乱流 / L-H遷移 / シミュレーション |
研究実績の概要 |
トカマクプラズマの改善閉じ込めモードの定量的予測を目的として、第一原理コードBOUT++_LHの開発を進めている。低閉じ込めモード(L-mode)から高閉じ込めモード(H-mode)へのL-H遷移機構として加熱パワー印加による径電場の生成とそれに伴う異常輸送の抑制効果に着目し、第一原理シミュレーション研究を行う。本年度はL-H遷移の第一原理モデルの構築と第一原理コード開発に注力し、以下の成果を得た。 【第一原理モデルの構築】 L-H遷移の第一原理モデルの構築には流束駆動型の簡約化MHD方程式に加熱パワー印加による径電場駆動機構を導入する必要がある。そこで、静電抵抗性バルーニングモード(RBM)乱流によるL-H遷移の第一原理モデル[L. Chone et al. PoP 2014] の物理的背景の調査を行い、径電場駆動機構が熱流束の寄与を取り入れた新古典平行粘性の平均流成分から得られることと同様の手法が電流拡散性バルーニングモード(CDBM)乱流によるL-H遷移モデルに適用可能であることを確認した。また、CDBM乱流によるL-H遷移モデルの構築を行い、適切な極限(スラブ近似、静電極限、二流体効果を無視)の下で静電RBM乱流によるL-H遷移モデルが再現されることを解析的に確認した。 【 第一原理コード開発】 三次元非線形MHD/乱流コードBOUT++上で動作する物理モジュールとしてL-H遷移の第一原理コードの開発に着手した。コードの動作検証のために静電RBM乱流によるL-H遷移モデルを用いた予備的シミュレーションを行い、バルーニングモードの成長と飽和が得られることを確認した。また、米国ローレンスリバモア国立研究所のBOUT++開発グループを訪問し、L-H遷移の第一原理コード開発に適した磁気平衡入力ファイルの作成手法に関して議論を行い、解析的磁気平衡ファイル作成コードの仕様変更に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
L-H遷移の第一原理モデルの構築に関しては概ね当初の計画通りに進めることが出来たが、一方で、BOUT++コードによるL-H遷移の第一原理コード開発に関しては予定からやや遅れている。これは、コード開発は日本原子力研究開発機構でBOUT++コードのIFERC-CSC計算機への移植作業を行っていた研究員と議論をしながら進める予定であったが、本年度の8月に当該研究員が国外の研究機関へ移籍したため、コードの使用方法や内部構造の把握と物理モデルの実装に想定以上の時間を要したことが原因である。そのため、研究計画を一部変更し、来年度に予定していたBOUT++コードの開発グループがある米国ローレンスリバモア研究所への訪問を本年度に前倒しして行った。この訪問でコードの内部動作と入力ファイル作成に関する詳細な情報を得ることが出来たため、今年度の研究活動により、遅れを回復できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はL-H遷移の第一原理モデルの構築とBOUT++コードを基にしたL-H遷移の第一原理コードBOUT++_LHの開発を行い、二場(渦度、圧力)の簡約化MHDモデルで記述される静電抵抗性バルーニングモード(RBM)乱流による予備計算において不安定性の成長と飽和が得られることを確認した。その成果を踏まえて、電流拡散性バルーニングモード(CDBM)乱流によるL-H遷移シミュレーション手法の構築とCDBM乱流輸送モデルの高度化を次の3段階に分けて遂行する。 まず始めに、電子ホール効果と流れの圧縮性を考慮した二場の簡約化MHDモデルによるL-H遷移シミュレーションを行い、ドリフト波不安定性がL-H遷移過程に与える影響を調査する。合わせて、計算条件設定の検討と乱流輸送解析に必要となるコード群の開発を行う。 次に、三場(渦度、オーム則、圧力)の簡約化MHDモデルによるL-H遷移シミュレーション手法の構築を行う。低ベータ領域では電磁RBM乱流は静電RBM乱流と等価になるため、始めは低ベータ領域における電磁RBM乱流のL-H遷移シミュレーションを行い、本年度に得られた知見を基に計算結果の妥当性の検証を行う。低ベータ領域における三場のL-H遷移シミュレーション手法を確立した後、高ベータ領域における電磁RBMモデル、CDBM乱流輸送モデルへと段階的にL-H遷移モデルの高度化を行う。 最後に、CDBM乱流によるL-H遷移シミュレーションによるパラメータスキャンを行い、圧力シアや磁気シアに対する不安定性成長率や熱拡散係数の応答特性を整理し、L-H遷移時の熱拡散消失に係る要因の定量的な評価を行う。得られた知見を基に、CDBM乱流輸送モデルの高度化を試みる。
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