多量の熱空孔の内包するとされるFe-Al合金を主な研究対象として、高温から焼入れした材料のミクロ組織観察および電子線ホログラフィーによる空孔濃度偏析の可視化を試みた。その結果、ある組成域においては従来の状態図では説明できない相分離の存在が確認されたが、この組織の詳細な組成分析および電子線ホログラフィーによる内部電位解析の結果、1at.%程度の組成分配が確認されたが、空孔量の変化に伴う内部電位の変化は有意には確認されなかった。これは空孔量の再分配が非常にわずかであるために検出精度限界以下の内部電位差であった、もしくは観察中の電子線によるノックアウトや経時減衰により内在空孔量が減ってしまったためと考えられる。 この現象については理論ベースで可能性を検証するため、第一原理計算をはじめとした熱力学計算に基づき空孔量と相安定性について引き続き調査している。 他方、bcc-baseのFe-Al合金系の面白い点として、原子配列規則度が小さくなるほど磁性が強くなるという、一般的な磁性体とは逆の傾向を示す特徴がある。本研究課題においては、熱処理を工夫することにより原子配列規則度を変化させた種々の合金に対し磁性を測定した。この結果、規則度が変調する内部欠陥(逆位相界面)を内包する試料においては複数のキュリー温度を有することが明らかになった。この結果から、従来知り得ることのできなかった不規則状態の磁性を推測することができるようになった。
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