①ヒト遺伝多型としてのテロメア配列挿入の発見 オンライン上でアクセス可能な“国際1000人ゲノムプロジェクト”の次世代シークエンスデータを解析し、ヒトゲノムの中に遺伝子多型としてテロメア配列挿入があることを見いだした。その中の一つは、遺伝子領域が5kbp欠失し、そこに60bpの(TTAGGG)n配列が挿入されているものである。欠失により領域の遺伝子AKNAD1の1エクソンがまるごと失われており、当該遺伝子の機能異常を伴う可能性がある。この遺伝子多型は、JPT(日本人東京)、HCB(中国人北京)のそれぞれ1個人に共通した配列であり、東アジア地域に共通祖先がいたものと思われる。この現象は過去の1個体の生殖細胞において生理的なDNA-DSB部位がテロメア配列挿入によって修復された事を示唆している。 ②DNA損傷がテロメア配列挿入で修復される事の証明 I-SceI認識配列導入細胞株(F5、A15)を用い、I-SceI発現により細胞内で1箇所導入したDNA-DSBが、(TTGGGG)nのテロメア配列挿入で修復されることを確認した。異なる機序のDNA損傷で同様の現象が起こるかどうかCRISPRでのDNA二重鎖切断の導入の系を確立した。修復部位の挿入配列については、当初はDNA切断した部位をPCRにて増幅し、TAクローニングしたものから切断部位が配列挿入で修復されたものを確認していた。この方法では時間労力がかかるため、PCR産物を次世代シークエンスによるディープシークエンスすることで、ターゲット部位の切断効率、修復機序(欠失、挿入)を網羅的に解析する方法を確立した。 挿入配列がテロメラーゼ活性によるものであることを示すため、ヒトテロメラーゼ(hTERT)およびそのドミナントネガティブ型(hTERT-DN)の発現ベクターを作成し、細胞株での発現を確認した。
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